例会速報 2018/09/23 県立新城高等学校


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例会前の「コイン選別器工作会」 喜多さん主催の有志工作会
 喜多さんは八王子例会でコイン選別器2018年8月版を披露した。その折、喜多さん曰く「収納サイズはA4なのだが、このコインを受ける紙コップが少しかさばる。」高杉さん曰く「だったらコイン受けをボードで作ったら。」こうして気兼ねなく言えるところがYPCのいいところだ。アドバイスを受けて、カラーボードで仕切りを作り、更にサイドを塩ビの透明な板にしたので、紙コップでは見えなかったコインが直視できるようになった。更なる進化だ。こうして完成したのが左の写真。A4サイズの収納で厚さが何と22mmで収まることになった。A4ボックスフォルダに格納できる。
 YPCメンバーの熱い要望に応えて、今回の「2018年9月版」の工作会を開催することになり、例会に先立って有志が集まった。材料は喜多さんが調達してくれるが、工作は自分でやる。材料費は700円。喜多さんの指導のもと、一時間あまりの工作で全員が完成した。製作に少し手間がかかるが、その時間を使う価値が十分にある完成度の高い教材だ。
 

授業研究:熱力学 小沢さんの発表
 小沢さんは、この夏の科教協全国大会(2018.8.3~5、群馬)で報告した「熱力学」の授業を、例会でも報告した。従来、この単元の授業は気体分子運動論の計算から入り、内部エネルギーの式を導出してから、熱力学第1法則に進むという流れが多かった。しかし、それでは出だしから抽象的で生徒は興味を失いかねない。そこで、小沢さんは、なるべく具体的な現象から熱力学第1・第2法則のコンセプトをつかめるように授業を組んだ。

 まず、熱力学第1法則。仕事によって温度が上がる例として、非弾性ボールを半分に切ったもの(切った物が市販されている。東京防音THI-304)を木槌で50回叩く。叩く前後の温度を、デジタル温度計で測って、上昇することを確認する。「最近ストレスたまっている生徒いないか?」と呼びかけて、生徒に叩いてもらうと盛り上がる。
 

 また、圧気発火器を2人に1セット程度用意して、実際に生徒に操作させ、ティッシュ片の発火を確かめさせた。動画(movファイル3.0MB)はここ。費用を抑えるために、自作品を使用した。作り方は「いきいき物理わくわく実験2」(日本評論社)の飯田洋治さんの記事を参考にした。なお、経年劣化でアクリルパイプの発火部付近が破裂する恐れがあるので、底を切り取ったペットボトルでカバーを作るとよい。
 次に第2法則。等温のものを、高温部と低温部に分けるためには仕事が必要ということを、ペルチエ素子で示す。「仕事」を強調するために、乾電池や電源装置ではなく手回し発電機を使ったところがポイント。これも2、3人に1セット用意して、実際に確かめさせた。さらに、アナロジー(?)として、ダイソーで購入した「ムービングボール」という玩具を提示。青とオレンジの小球が混ざっているとき、これを色ごとにを分けるためには労力(仕事(?))が必要。逆に、分けてあるものを混ぜるのは簡単。何となく熱力学第2法則っぽい。ずっと前のYPC例会で加藤竜一さんから教わった。
 

 「仕事から温度差を作れるならば、温度差から仕事をつくれるか?」と問い、右の写真のような装置を生徒に配る。赤い缶には湯を、青い缶には氷水を入れておく。ペルチエ素子にプロペラ付のモーター(太陽電池用)をつないでおいて、ペルチエ素子を赤と青の缶で挟むと、モーターが回り出す。このまま放置すると、いずれ温度差は小さくなり、モーターは回らなくなる。これを、高温部から熱を得て、その一部で仕事をして、残りを低温部に捨てるという熱機関のしくみと対比させる。
 このように、熱力学第1・第2法則について、定性的ではあるが、具体的な事例を演示で済ませることなく、生徒に直接操作させることで、このあと学習する定量的な扱いや、気体分子運動論のような抽象的な内容に向けての動機づけとすることを心がけた。
 

光電効果 市江さんの発表
 市江さんは、高校3年生の原子物理分野の生徒実験に光電効果を取り入れるべく、いろいろと検討中である。実験の再現性はもちろんのこと、生徒に殺菌灯を扱わせることへの安全面への配慮は、演示実験以上に求められる。用いる殺菌灯は、YAZAWAハンディー除菌ライトTVR13WH である。ネット通販で1000円を切る価格で入手できる。この製品は、UV-Cレベルの紫外線を出するため注意が必要だが、UVランプが非常にコンパクトで指向性に富み、無駄な照射を避けられるといった利点がある。さらに安全メガネを必ず着用させ、紫外線の遮蔽に十分配慮する必要がある。
 

 実験は、はく検電器と銅、亜鉛、アルミ板を用意し、以下の手順で行う。
1.金属板をそれぞれ荒い紙やすりでよく磨く。
2.その金属板をはく検電器の金属板の上に置き、はく検電器を負に帯電させる。(正に帯電させても光電効果は起きない。)
3.殺菌灯の紫外線を照射する。
 すると、光電効果により負電荷が減少し、はくが次第に閉じていく。すべてで光電効果が認められた。金属の種類によって、はくの閉じ方に差が出たり、光源をブラックライトの紫外線に変えると、金属によっては閉じないものが出てくる。2005年2月例会の報告によると、UV-Bのブラックライトでは、アルミ、亜鉛ではくが閉じ、銅では閉じなかったとある。最近入手できる安価なブラックライトはUV-Aのものばかりだが、それで追実験を行うとまた違った結果が得られた。さらに詳しく調べ、次の機会に報告したい、と市江さんは語った。期待したい。
 

「世界一簡単な構造の電車」の動作原理について 山本の発表
 「世界一簡単な構造の電車」の動作原理に関連して前回の例会速報の解説にも記載したことだが、例会後の思いつきだったので、今回例会の席であらためて解説した。
 この電車が動く仕組みについてはいろいろな表現で説明が可能だが、中高生が学ぶ教科書的な説明としては、電流が磁界から受ける力(フレミングの左手の法則)を用いるのがわかりやすいだろう。磁力線は青で描いたように電池の側面に垂直に立つので、コイルを流れる電流は図では水平向きに力を受けることになる。磁石はその反作用で進むわけだ。
 面白いのはここからだ。コイルの両端をオープンにしているときは二つの磁石の間にしか電流が流れないが、コイルの端と端をつないで赤い線のようにループにすると、「電車」の前方、後方でも同じ向きの力が発生する。前述の力と助け合って、電車はより「力強く」前進するはずだ。これは是非検証してみたい。回路的には並列回路が形成され、より多くの電流が流れることになる。

北海道胆振東部地震についての一考察 古谷さんの発表
 古谷さんは、地震情報の週刊有料メルマガ「週刊MEGA地震情報」を購読している。9月6日に北海道胆振東部地震が発生したが、メルマガ上では予知的な情報があったのだろうか、と地震直前のメルマガを読み直し、その後のメルマガもじっくりと見た。結果、一般人が気づくような警告的な記述は見当たらなかった。
 しかし、古谷さんは「胆振地方が地震の数ヶ月前から隆起から沈降に変化していました」と解説している部分に注目した。同メルマガは電子基準点の隆起・沈降データを根拠にするが、「経験則から沈降は隆起よりも地震発生に強く影響を及ぼす要因であるので警戒しなくてはいけない現象です」という。気象庁は「地震の予知は出来ない」との見解をとっているが、地震後の現象の特徴が明確になるならば予知的な見解も出せるようになるのではないか?と古谷さんは考えている。大きな被害が出る前に分かるようになってほしいものだ。
 なお、国土地理院の解説にあるように電子基準点の測定データは、観測条件の変化の影響やノイズを含むことに注意しなければならない。「横浜地球物理学研究所」というブログでは、地震予知情報を提供する民間サイトの予報を批判的に検証している。RikaTan2018年10月号p.59の記事も参考になるだろう。


メルデの実験について 市原さんの発表
 メルデの実験で、左の図のように弦を水平に張った場合、音叉を横倒しに置いた場合は弦が音叉と同じ振動数で共振するが、音叉を垂直に立てた場合、音叉の半分の振動数で共振する場合があることが知られている。
 では、斜めに弦を張ったらどうなるのだろうか、と思い、市原さんは実際に実験をしようとした。電磁音叉がなかったので、記録タイマー(50Hz)にゴム紐をつなぎ、振動させて定常波を作った。次に振動源の向きを90度変え、メルデの実験の再現を試みた。振動の確認は、カシオのハイスピードカメラで動画撮影をして弦の振動を比べた。
 ところが、弦の張り方が振動方向に垂直な場合も平行な場合も、50Hzの定常波しか作れなかった。電磁音叉なら事情は違うのかもしれないが、モードとしては50Hzで共振することがあっても良いと思われる。よく問題集などで、「振動方向と平行に弦を張ると振動数が半分になる」ことを知らないと解けない問題があるが、必ずそのモードしか現れないとは限らないために、設定に無理がある問題となっている可能性がある。もちろん「振動数が半分になった」や「向きを変える前とは違う振動数で共振した」などの記述があれば問題は成立するが、条件の出し方には気をつけておきたいと思った。また実際に確認実験をすることは大切な姿勢だと思う。
 

世界を変えた書物展 市原さんの発表
 例会翌日の9/24まで上野の森美術館で開催されていた、金沢工業大学所蔵の「世界を変えた書物」の展示会を市原さんは見学してきた。平日ながら、かなりの人出があった。
 コペルニクス、ガリレイ、ニュートン、アインシュタイン等の初版本約100冊が展示されており、ありがたいことに入場料無料、写真も撮り放題で、レプリカ本は実際に触ることもできた。
 写真はニコラス・コペルニクス「天球の回転について」(1543年)のページから。グッズ化もされており、同ページの図をあしらったTシャツ(2000円)は白と黒の二色があった。秋・冬でも暖かく着れるように生地が少し厚めになっているらしい。
 

放射線について考えよう 市原さんの書籍紹介
 今年2月の例会で佐々木さんが紹介してくれた多田将さんのホームページ「放射線について考えよう」が書籍化された。特に書き下ろしなど新しい情報が増えたわけではなく、HPそのままではあるが、書籍として一冊にまとまっているのはメリットもある。
 中身はHPを見ていただければわかるが、「放射線の知識を持ってもらう」ことを目指したものではなく、「ある知識をもとに物事を考えていく、ということ学ぶ」ための題材として、放射線を選んだとも言えるだろう。平易な文体なので(長くなるが)高校生にも読みやすく、生徒にオススメできる。

相模原市公民館実験教室「空気」 門倉さんの発表
 門倉さんは、毎年、公民館の夏休み中のイベントとして子ども実験教室を頼まれている。実験教室は、小学生対象で低学年も多く参加するため、原理よりもものづくり中心に内容を組み立てている。今年は、「空気」をテーマに2時間半の実験教室を行った。
 

 工作内容は、①ストロー吹き矢、②ふき玉、③簡易ホバークラフト、⑤CDホバークラフト、⑥段ボール空気砲(段ボール箱に穴をあけたもの)、⑦ペットボトル空気砲の工作を行った。この中で、最も子どもたちからウケたものは、ペットボトル空気砲(写真左)だったが、YPCの例会では、意外にもストロー吹き矢(写真右)の反響が大きかった。BB弾を先につめた長短の「吹き矢」を細いストローの「吹き筒」にかぶせて吹くという方式が新鮮だったのかもしれない。
 

県民教「夏の教育研究大会」鈴木大裕氏の講演記録 門倉さんの発表
 門倉さんが提供してくれたのは、8/19の県民教第53回夏の教育研究大会における鈴木大裕氏の講演記録。
 鈴木大裕氏は、高知県土佐町の教育NPOで活躍されていて、「崩壊するアメリカの教育」岩波書店(2016)の著者である。講演の内容は、ゼロトレランスというテーマだったが、新自由主義がアメリカの公教育を蝕み、荒廃させている現状と、悉皆の全国学力調査の結果公表による影響、公教育における学力向上を銘打った教育産業の導入の課題など、日本の状況もアメリカに追従していることを訴えていた。新学習指導要領も、今までのカリキュラム・スタンダードからパフォーマンス・スタンダードに方向転換し、教師の力量を評価していく方向に向いていることを示していた。では、それに対抗するにはということについては、あまり明確な方向性は出していなかったのは残念だった。

中教審教育課程部会、評価ワーキング資料 門倉さんの資料紹介
 新指導要領が施行されることにより、観点別評価も4観点から3観点に変わる。そこで、中教審教育課程審議会では、児童生徒の学習評価に関するワーキングが行われている。9月5日には前回のワーキング(第3回・2018年4月17日)の資料が文科省のHPに掲載された。その中に、1・2回のワーキングにおける主な意見の資料があり、例会の席で紹介があった。
 内容は、各校種ごとの評価に対する課題が出され、それを改善するための意見が出されている。特に、「主体的に学習に取り組む態度」(以前の興味・関心・態度に該当)については、評定資料としてふさわしいのかも含めて検討されている。この話し合いを受けて、評価・評定の方法が示され、国研による評価・評定の資料が出されるので、今後注目が必要だ。
 当該の配付資料・「児童生徒の学習評価に関するワーキンググループ(第1・第2回)における主な意見等」(PDFファイル201KB)はこちら
 

OK Goの無重量動画 越さんの紹介
 越さんは無重量の動画、OK Go の Upside Down & Inside Outのプロモーションビデオを紹介した。
 ロシアの宇宙開発組織ロスコスモス、ガガーリン宇宙センター、S7航空の全面的な協力により1か月ほどかけてこのPVは撮影された。S7航空の宇宙飛行士訓練用の大型ジェット機によるパラボリックフライトを繰り返し、27秒間×8回の無重量状態の映像を編集し、更に20%ほど再生を速くして、約3分のPVとしている。これだけ綿密に仕組まれたパラボリックフライトによる無重量状態の映像は他にはない。.
 

 途中のキャビンアテンダント役のスピンなども見事だ。「OK Go 無重力」で検索すると、本編以外のメイキングに関する情報も得られる。絵の具まみれの機内を掃除するのはさぞ大変だっただろう。関連リンク:OK Goの最新PV「無重力」撮影の舞台裏
 

巨大モザイクアート 越さんの発表
 越さんは、勤務先の高校の文化祭のテーマに合わせて文化委員会の企画として、生徒と共に巨大モザイクアート写真(写真左)を製作した。各クラス50~200枚、合計で約1400枚の写真のデータを、スマホのエアドロップやiCloudフォトの共有により、比較的簡単に集めることができた。全体では1万ピ-ス(同じ写真を数回ずつ使用)、縦1.2m、横2.4mの大きさの作品を校内に展示した。
 

 1ピースは約2㎝四方の写真だ。2013年9月の例会で紹介した「アンドレアモザイク」というフリーソフトを用いて、元のモザイクアートの画像を製作し、ソースネクストの「ズバリ巨大プリント2」というソフトでA3版写真用紙24枚に分割して拡大印刷し、つなぎ合わせた。また元の写真を4枚ほど提示し、「この写真をさがせ!」という指示を掲示した(写真右上)。生徒たちは、それら写真や、自分が提供した写真を楽しそうに探していた。気になる費用は、この大きさでインク代と写真用紙代合わせて7,000円ほど。
 

二次会武蔵中原駅近く「㐂太郎」にて
 17名が参加して「カンパーイ!」。武蔵中原駅にほど近いうどん屋さんで打ち上げ。もう10年以上前になるが、鈴木健夫さんが新城高校に勤めていた頃に、例会の後よく立ち寄った懐かしい店だ。うどんや天ぷらが本格的でうまい。鶏の唐揚げもおすすめ。しかも安い!


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