2010年12月4日(土)愛知工業高校での例会の記録です。
11月23日、韓国の延坪島と周辺の黄海水域に北朝鮮側が砲撃するという事件がありました。 100発以上が着弾し、民家が炎上し、死者もでました。 韓国軍も80発以上を応射したようですが、狙いの正確さとか、破壊力の大きさなどの記事が、その後の新聞などの紙面をにぎわせています。 戦争は軍事技術の向上の為の科学・技術を前進させてきた一面はありますが、もうそのような時代であってはならないと考えます。平和な環境で、知的好奇心を土台に科学を前進させる時代にすべきです。 為政者たちは、安易な力の解決に走るのではなく、理性的で冷静な解決策を見つけ出していくべきだと思います。 |
X-Flyer (山本さん) |
X−Flyerというおもちゃの紹介です。 本体の電池を充電し、スイッチを入れると、本体底のプロペラが回転し、浮き上がります。 本体下に手をかざすと、手に接触しないように再度浮き上がります。 |
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スイッチを入れると回転を始め、浮き出します。 | 浮き上がって落下しますが、手をかざすと再度浮きます。 |
本体下部に赤外線LEDがあります。デジタルカメラで見ると、動作時に光っていましたので、これで手の位置を調べていると思われます。受講部は中心部にあると思われます。 では、赤外線で距離を測っているのでしょうか、明るさを測っているのでしょうか。 本体下に、白いノート、黒い板を置いてみたところ、白いノートのほうには反応しましたが、黒い板のほうは反応せず落下しました。これだけで断言はできませんが、赤外線の反射率(つまり明るさ)を測定していると思われます。 |
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白い紙だと反応して浮き上がります。 |
黒い板だと反応せず落下し続けます。 |
Full充電で飛ばして、数分間動作します。10分ぐらい飛び続ければいろいろできそうな気がします。 なお、山本さんは、この本体を2700円で手に入れたそうです。 |
再び、なぜ満潮や干潮は一日に2回あるの? (山本さん) |
潮汐の問題に取り組んでいる山本さん。 海上保安庁海洋情報部に質問のメールを出してみました。 返信が来たので、その内容を紹介してくれました。 【質問】潮汐の時間的変化について質問します。 地形による影響をあまり受けないでろう小笠原においても、満月のとき満潮で水位が最高になる時刻は、月が南中する真夜中ではなく、朝方6時ごろになるのはどうしてですか? およそ6時間もずれるので、地球規模で90度(1/4)もずれているので、海洋の庫擦や慣性での説明では納得できないのですが? (干潮も同じように6時間遅れる。) |
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海上保安庁海洋情報部ホームページをご利用頂きまして有難うございます。海洋情報部及び日本海洋データセンター(」ODC)へのお問い合わせ、海洋資料・データに関する提供窓口を担当しています海の相談室からお答えします。お間合せについて、十分な回答ではないかも知れませんが次のとおり回答致します。 潮汐ついて説明された図の多くは地球を覆う海氷があたかもラグビーボールのような状態になるように説明されておりますが、地球と海水の摩擦などがなく地球と月(太陽)の位置関係が潮汐に瞬時に現れるとした場合であっても、潮差の最大は1m以下とされており、ラグビーボールのような表現は分かりやすいのですが、かなり誇張されております。 地球上で実際に起こっている潮汐は、上記のような簡単なものではなく、地球(海底)と海水が摩擦を生じながら島の影響も受け、潮浪として伝播して行くものと考えられています。また、潮汐にともなう海水の流れも深さにより変化する等複雑であります。そして、このようなことが影響して地球と月(太陽)の位置関係が潮汐に瞬時に現れることな<、遅れてしまうことになります。日々生じる各地点の潮汐は地形の影響等で近い地点でも異なります。 参考となる図書のひとつとして以下のようなものがあります。海洋科学基礎講座海洋物理V<東海大学出版会> 以上ですが、他にご不明な点がありましたらまたお問い合わせください。 海上保安庁海洋情報部「海の相談室」 電話:03-3541-4296(ダイヤルイン) E-mail: consult@jodc.go.jp 利用時間:午前10時一午後5時 休館日:土・日曜、国民の祝日および年末・年始 |
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結局、6時間遅れる主たる原因ははっきりしませんでした。紹介された本を熟読する必要がありそうですね。 海上保安庁の担当者のみなさん、ありがとうございました。 <参考> なぜ満潮や干潮は一日に2回あるの?(山本さん) |
潮汐力についての考察 (川田さん) |
潮汐力が起こる原因についての考察です。 地球と月は互いの共通重心の周りに回っています。 このとき自転を無視すると、地球上の各点は同じ動きをすることになります。 つまり遠心力はどこでも同じ大きさ。 しかし、月からの距離が異なるため、月からの万有引力の大きさが異なります。よって図のP点とQ点で物体が受ける力は、互いに逆向きで同じ大きさになります。これが潮汐力です。 |
互いに共通重心の回りに回ります。 注:この棒を回すと天体は自転していることになります。 自転を無視すると、地球上の各点はどこも同じ遠心力を受けます。 この遠心力と月からの万有引力の合力が潮汐力になります。 |
本来、潮汐力だけなら、月の方向に海水は膨らむはずですが、地球は自転しており、海水との粘性抵抗がはたらきます。これにより海水は、潮汐力だけでなく粘性抵抗力が働き、ふくらみの方向が月の方向になりません。満潮は月の南中より時間的に遅れて起こることになります。 地球はこの粘性抵抗のため自転の速度が遅くなり、周期は長くなります。実測によると、100年間で 2×10-3 秒遅くなっているそうです。 |
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地球の自転が長くなることは、角運動量の減少を意味しますが、その分月の角運動量の増加分になります。月は好転速度が増加して、年に5cmの割合で地球から遠ざかっています。 |
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一方、月にも同じく潮汐力が働き、引き伸ばされた月の膨らみが地球と月を結ぶ線上よりずれます。すると、月には自転を遅らせるトルクが働きます。 〔自転周期<公転周期のとき〕 |
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〔自転周期>公転周期のとき〕 自転を速くするトルクがはたらきます。 |
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〔自転周期=公転周期のとき〕 運動は安定します。結果として月は地球に同じ面を向けて運動するようになったわけです。 |
静電気を調べる (伊藤 昇さん) |
自然科学入門講座の実験キットです。 「物質と電気」の授業で使います。 ストローを糸でつるして、端を紙でこすります。もう一本のストローも紙でこすってから先のストローの端に近づけます。同種の摩擦電荷ですから反発力がはたらきますね。 アクリル棒を紙でこすって近づけると、今度は吸い付いてきます。異種の電荷による引力ですね。 |
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紙でこすった同じ材料のストローを近づけます。→反発します。 | 紙でこすったアクリル棒を近づけます。→吸い付きます。 |
紙をつるして、ストローやアクリル棒を近づけると、どちらも紙を吸いつけます。アルミ箔をつるしても同じことがおきます。 静電誘導ですね。 先の場合と違って、ストローでもアクリル棒でも引力でした。 この違いの理由を考えさせる、という教材です。 何でも実物で事実を確かめながら学ぶと、確かな知識につながりますね。 それにしても、約60人分キットを用意するのは大変です・・・・。 |
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<参考> 44円電池(伊藤さん) |
ミニマジックウォール (伊藤 昇さん) |
今度は「電磁波」の授業での偏光の実験キットです。 塩ビの透明パイプ(φ19mm)に、偏光板を2枚丸めて入れます。偏光板の向きをうまく合わせると、ミニマジックウォールになります。 向きが合わないと、駄目。 偏光の意味と現象を実物で考えさせるキットです。 |
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すっとびボール現象? (林さん) |
ペットボトルに適当な数の鉄球を入れ、ペットボトルを小さな振幅で上下に振ってやります。 すると、写真のように鉄球がかなり高くまであがります。 これは、鉄球同士の衝突が起こって、すっ飛びボールのような現象が起こっているのだろう、と考えました。 鉄球同士より、容器の底との衝突ですっ飛びボール現象が起こっているでは? との声あり。 そこで、鉄球の数を減らし、鉄球同士の衝突が起こりにくくしてボトルを振ってみました。 今度はそんなに高く上がりません。 やはり、鉄球同士の衝突により、小数の鉄球が高く跳ね上がるということが起こっているようです。 気体分子運動モデルの装置も、この小球同士の衝突をうまく利用しているのですね。 |
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鉄球の数を減らして振ってみると、そんなに高くは上がりませんでした。 |
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磁場中の霧箱 (林さん) |
まず、このコイルを見てください。この大きさに驚かされます。 しかも手作りです。 1.2mmφのエナメル線を20kg使用しています。45層で、一層45巻きです。 十分大きな磁場を作るため、コイルに流す電流を大きくする必要があります。このためコイルを4分割して、各分割コイルに約10Aの電流を流し、トータルで0.05T(テスラ)=500ガウスの磁場を作ります。 (ひとつながりのコイルでこれだけの磁場を作ろうとすると、銅線の抵抗のため高電圧をかけないと十分な電流を流せません) |
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ドライバーが吸い込まれそうになります。 | |
電流を流すと、強い磁場が広範囲にでき、ドライバーを近づけると、中心に吸い込まれるような力を受けます。 磁性流体を中心付近に置くと、流体が針状に変形します。 |
このコイルの中にあるのが、最新型の霧箱です。 透明塩ビシートを丸く巻いて筒にします。 黒紙とラップで底を作り、中に少量のエタノールをいれます。 一方向から光を当て、飛跡を見やすくするための、側壁用黒紙をいれ、上部には、脱脂綿で作った輪にエタノールをしみこませて、落ちないようにしてラップをかけます。 |
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底は黒紙とラップ。輪ゴムでとめておきます。 | 光の取り入れ窓を開けた黒紙を筒にして入れます。 |
エタノールを浸み込ませた脱脂綿。 | 上部、下部ともラップで閉じておきます。 |
霧箱の上部にあるのは、雑イオン除去用の高電圧電線です。 短時間なら、なくてもかまいません。 霧箱の下部をドライアイスで冷やして、壁の横に放射線を出すマントルを置きます。 斜めから懐中電灯を当て、上部から覗くと、放射線の飛跡が見られます。 コイルに電流を流すと、飛跡がまっすぐからカーブする変化を見ることができます。飛跡の主は電荷を持っているんだ、ということが確かめられます。感動ですね。 |
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マントルからの放射線はトリウム系列と考えると、β線のエネルギーレベルはMeVのオーダーですので、β線のエネルギーが1MeVとして、β線の速度v を非相対論で求めると 1.6×10-19×106=1/2・mv2 v=5.9×108m/s ( ただし、m=9.1×10-31kg ) 何と光速を超えてしまいます。これはまずいですね。 相対論を考慮してみます。 mを電子の静止質量、 β線のエネルギーを E として この2式より E=1MeV=1.6×10-13J m=9.1×10-31kg c=3.0×108 として計算 β線の速度v=2.6×108m/s になりました。 β線の飛跡の曲率半径を求めてみます。 として evB=m’v2/r ∴ r=m’v/eB B=0.050T として r を計算すると r=5.8cm となります。 実験の値と合っています。 |
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飛跡がカーブしていることがわかります。 下は、その部分の拡大図。 |
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