2013年2月23日の記録の第2ページです


 自動サイフォン (山本さん  
 浴槽のふちにかけたタオルをつたってお湯が滴り落ちるというのは誰しも経験していることでしょう。
 これは、毛細管現象とサイフォンが組み合わされた現象と考えられます。 

 このサイフォンの現象についていくつかの実験を紹介します。  

 サイフォンを使うには、管の中を液体で満たさなければなりません。これが意外と面倒。そこで、自動的にサイフォンになる仕組を試してみました。
  

 短いストローの片側を指で押さえ、コップに入れます。この状態で指を離すと、ストロー内を液が上がって来て、勢いあまってストローの上の口からあふれ出ます。     
           
 
 そこで、ストローを「へ」の字形にして、片側を指で押さえ水に入れ、手を離します。
 コップの水が出てきます。
 ただし、への字の頂点が、水面よりわずかに高い時のみ成功します。 
 そこで、指を離したときの最初の水の流入の勢いをつけるために、水中部分を折り返します。
 こうすると、水が流入するとき、重力により勢いが強くなるのでは(?)・・・・
 1回の折り返しでは、水面がすぐストローの口に近づくので問題です。?! 
 サイフォンで流せる水の量がたくさんになるよう、さらに折り返します。・・・・・・

 何度も折り返すなら、最初のへの字と同じようになると思われますが、どの形が効果的かはまだ実証が終わっていないそうです。
 日常生活でサイフォンを役立たせているものといえば、灯油のポンプでしょう。

 上部の空気抜きを利用して、灯油を吸い上げ、もう一方の管に流し込ませます。
 給油の液面と。受油の液面に高さの差があれば、ポンプ内を灯油が流れ続けます。

 もっとも、最近は電池式のポンプで灯油をくみ上げる、さらには、セントラルヒーティングで石油ストーブなど使わない(!)ため、このポンプを知らない生徒が出てきています。
 

 今日の発表は、右の本を参考にしています。

 サイフォンの科学史―350年間の間違いの歴史と認識
   宮地祐司 著 仮説社  価格:1,890円

 サイフォンをめぐる間違いの歴史を科学史的に解明。さらにサイフォンの原理を教える授業書付き。

  さらに、サイフォンに絡んだ次のような問題を出して皆を大いに悩ませました。
 
 閉じた管を水面に立て、管を引き上げると、水柱ができますが、この高さは約10mまで可能で、それ以上管をあげても、内部に真空ができるだけで、10m以上の水柱はできない、という事実があります。(完全な真空ではなく、水蒸気があります)
 


 では、右のようにサイフォンで水を流し続けている状態のまま、上の水槽の水面と管の最上部の高さの差を大きくしていったら、どこまで流れ続けるでしょう。

 静止した水と流れている水で違うのでしょうか、それとも同じでしょうか。
 皆の意見が割れました。

 もし、10m以上が可能だとすると、どこまで増やせるのでしょう。
 ぜひ実験してみたいですね。
 
 

 管内の水面と水だめの液面の差は最大約10mになります。
 水だめの液面での空気の圧力で高さが決まります。
  

 横から見る霧箱 (林さん  

 霧箱は上面から観察するのが普通ですが、側面から観察することで、宇宙線が立体的に見えるようになります。

工夫したポイントは以下のとおりです。

 (1)β線や宇宙線はα線に比べて気体分子を電離させる能力が低い。霧箱の過飽和層で発生するイオン数が少ないので生じる液滴の数も少なくなり、飛跡が淡い。淡い飛跡が良く見えるようにするには、見ている正面から光を当てるのがベスト(反射光の強さが側面の約100倍になる)だが、反対側の壁が光って逆に飛跡が見えにくくなる。壁が光らないように、また飛跡に当たった光がある程度反射してくるように光を斜め上方から照射し、その光が壁に当たって反射して来ないように工夫した。またLEDの数を増やして照明を明るくし、斜め照射による飛跡の反射効率の低下を補った。
 (2)底面は−50℃に冷やされている。そのため側面の窓は下方が結露する。結露を防ぐために正面の窓を2重にして断熱に努めた。またプラスチック容器の窓側に撥水処理を施した。
  
  装置全体像です。左側に覗き窓があります。  覗き窓から見た内部のようす。  内部にベータ線の飛跡が何本も見えています。

 次々と進化を続ける林式霧箱です。
 上から降ってくるのは宇宙線、横から来るのは壁等の放射線源(強度は無視できる程度です)からでしょう。 
 私達の周りには放射線が満ちているということが再確認できます。
 
 

 磁区を作る2 (飯田さん  
 
 前回の例会での発表の続きです。
 <参考> 磁区を作る (飯田さん)

 前回の磁石は、直接接触していたので、いったん向きが定まると動きにくい、つまり、偶然によって磁区が決まる場合が起こると思われます。そこで、球磁石を円柱形のプラスチック内にいれ、球磁石がスムースに回転しやすくなる工夫をしました。
 結晶格子モデルに、磁石をつけたり離したりして、各球磁石が周りの磁石の影響を受けてどのような向きになるかを、透明シートを当てて記録します。
(根気の要る作業です。)                                                                                                                       
 各場合について、シートにスピンの向きを書き入れていきます。  一個一個がスムースに回転できるので特徴がよく現れます。
 各磁石の配置が三角格子状になっているときのスピンの様子の一例です。
 磁石があるときは、その磁場によってスピンが整列します。
 磁石を遠ざけると、各原子(球磁石)は、近傍の原子と力を及ぼしあってスピンの向きがそろう傾向が見られます。しかも。近傍では向きがそろう傾向があるのに、おおきな領域では、全体として磁化を打ち消すように配列しています。
 3角格子を作る物質は強磁性を示すといえます。
     赤線、赤の点線で囲まれる領域は、全体として磁化が0になっています⇒強磁性
 各磁石の配置が正方格子状になっているときのスピンの様子の一例です。
 磁石があるときは、その磁場によってスピンが整列します。
 磁石を遠ざけると、各原子(球磁石)は、近傍の原子と力を及ぼしあって小さな領域で磁化を打ち消す傾向が見られます。
 正方格子を作る物質は反強磁性を示すといえます。
 
 正方格子の物質では、緑の線で囲まれるような、近傍の原子同士が磁化を打ち消す向きに並びます。⇒反強磁性
 
 
  不対電子を持つ原子は、磁気モーメントを持っているといえますが、結晶の作り方、他種の原子の存在などで、全体として自発磁化を持たない物質になることもあります。
 逆に、これまで、顕著な磁性を示さなかった物質でも、化合物にしたり、合金にしたりすることで、強磁性を示す可能性もあります。

 磁性は複雑ですね。
  
 <参考>「磁石のふしぎ磁場のなぞ」 山部恵造 著  けやき出版
  マクロ物質の磁気モーメントが,原子の磁気モーメントの単なる合計ではなく,原子間の交換相互作用による協力現象として,それぞれに特徴のある,原子磁気モーメントの配列形式,すなわち磁気的秩序(magnetiC order)を持つようになってくることである。特に,原子が結晶などの規則的配列を構成すると,いっそう秩序がはっきりしてくる。もちろん“秩序”の特別な場合としで無秩序”がある。
 20世紀に入ってからの研究の結果,種々の新しい磁気的配列秩序も発見され,これまで常磁性・反磁性・強磁性といっできた磁性の分類が,もっと詳しくなされるようになった。

 

 身長は伸びるか? (佐野さん  
  これが物理学だ! ウォルター ルーウィン , 東江 一紀 ¥ 1,890 株式会社文藝春秋発行

 この本に、人間の身長は経っている時と、寝ているときで数センチ変化するということがのっていました。
 本当でしょうか。

 発表者を測ってみました。
 立っているときは、174cm。
 机に寝た状態で測ると176cm。
 若干の誤差はあるでしょうが、確かに伸びています。(慎重!に測定しても伸びているようです。)
 
 つるまきバネを、平らな面に置いたときの長さと、錘をつけずに吊るしたときの長さを比べても、同様な結果になりますね。
 人間の体は一種のバネと考えることができそうですね。

 <参考>この教授の授業の動画をutubeで見ることができます。

 正確にはL字型の角に足をつけるべきですが・・・・・
 

 百均シリーズ (前田さん  
 最初は「ぺたぺたてんとう虫」

 昔(?)はやったチョロQに磁石を付けた構造です。
 金属の上を、てんとう虫が這うように落ちずに移動していきます。
 写真は缶の周りを回っていますが、黒板などでもOKです。

 単に走らせるだけではもったいないので、何かうまい使い方のアイデアを搾り出しましょう。
 
 
 次は、昔懐かしい豆腐屋さんのラッパ。
 豆腐屋さん専用のラッパは、何万もするそうです。そこで百均の出番です。

  ゴム球を押した時と、膨らますときと異なる音の出るラッパ(horn)を探します。 ゴムの部分をとりはずして、筒をとりつけるだけ。
  吹いて、吸うと、確かに「と〜ふ〜」と聞こえます。

 ただ、今の生徒は豆腐屋さんのラッパを知らないかも。
 そんな彼らには、「と〜ふ〜」とは聞こえない??
 
 3つ目は、ミュージックキーボード。
 音声信号を使う実験には、低周波発振器、アンプ、スピーカー等たくさん用意しなければなりません。
 
 ところが、このキーボード1つで全部代用可です。
 キーを押せば、その音程の音が出ます。曲もいくつか聞くことができます。
 付属の小型スピーカー(丸い透明なカバーの中にあります)をはずして、ショート防止に6Ω程度の抵抗を直列につないで、外部スピーカー端子にします。単発の音声信号から曲までだせます。

 この端子を、手作りスピーカーにつないで、音の出ることを確かめたりできます。手作りスピーカーのエナメル線の抵抗は小さいので、6Ωの抵抗があることで、内部の回路を保護できます。
 これで、低周波発振器+アンプの働きをしてくれます。   手作りスピーカーにつなぐと、音は小さいながら聞こえます。
 
 今度は、スピーカーと端子との間に、いろいろな値の抵抗をはさみ、スピーカー音の大きさが抵抗値で変化することを耳で確認します。
 また、スピーカーと端子との間に2重コイルを取り付け、相互誘導の実験も可能です。
 大きなスピーカーも鳴らせます。  鉄心の出し入れで音の大きさが変化します。
 愛工にあった、大きなトランペットホーンは鳴らせるでしょうか、
 確かめてみました。

 出力をつなぐと、立派に鳴らすことができました。しかも、かなりの音量です。
 出力をモーターにつなぐと、モーターから音が聞こえます。
 なんでもスピーカーですね。

  この装置が100円ですから驚きです。電子部品の値段って、あって無きが如しですね。
  (日本の部品メーカーが立ち行かなくなるわけですね・・・・)
  理科教員としてはありがたいです。多少無理な使い方をしても、100円の出費ですみますから。
  見つけたときに、いくつかストックしておくことを薦めます。
 

 気体膨脹確認装置? (臼井さん  
 装置の名前がわかりません。古い装置のようです。

 使い方は、中の液体を円柱形のほうに集めておいて、球状部分を手で握ると、円柱形に集まっていた液体があわ立つというものです。 沸騰ではなく、球部の気体が膨張し、移動することによる泡立ちだと思われます。



 球部分をを暖める代わりに、円柱部分を冷やしても同じことが起こります。

 中の液体はおそらくジクロロメタンと推測されます。 水飲み鳥と同じですね。

  どなたか、名前及び使い方のご存知の方がいらっしゃいましたら、ぜひお教えください。
                                                       下部の管から泡が出ます。   円柱部を冷やしても、球部を暖めても同じことが起こります。
 

 整流子のはたらき (臼井さん  
 高校1年生から「物理基礎」が始まっています。
 このなかには、電気の分野も含まれており、モーターや発電機の仕組みを学びます。

 モーターの動きを理解するうえで、整流子の部分がネックになっています。
 そこで、廃品利用の説明器をつくりました。
   一巻きコイルのモーターです。   整流子で何が起きるのかを理解させたいですね。
 オレンジが負極につながる銅板を、白が正極につながる銅板をあらわします。
 モーターの回転軸を円盤で、コイルを棒であらわしています。円盤の周りが、モーターの軸についている整流子です。

 整流子が回転すると、コイルに流れる電流が切り替わることを、模型を動かしながら説明します。

 全員必修の物理では、理論的なことだけでは生徒のやる気を引き出すのは難しいですので、視聴覚に訴える教材を考案する必要がありますね。
 

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