2013年2月23日の記録の第3ページです


 「つまみーな」の力学 (川田さん  

 板を2枚蝶番でつなぎ、マジックテープで自由に角度を調整できるようにした三角板をつくります。これを指2本で持ち上げるという、摩擦力の実験です。
 この道具を「つまみーな」と呼んでいます。
 
 この三角板に加わる力を解析してみます。
 
 板の面に加える力をFとします。反対向きの2つのFで重力とつりあうことになります。

 Fを、辺方向の静止摩擦力と、辺に垂直な垂直抗力Nに分解して考えるものとします。
 Fが最も小さくてすむ場合は、静止摩擦力が最大静止摩擦力のときですから、
 垂直抗力N、最大摩擦力μN、重力Mg、頂角2αとして 
 
 鉛直方向の釣り合いから

      μNcosαMg/2Nsinα    N = (Mg/2)/μcosα−sinα
     
 従って加えた力Fはピタゴラスの定理より
    
   μが定数なのでαが大きくなると、右辺が大きくなり、必要な力Fは増大する。

  αが増加し分母が0近づく時、すなわち、tanα →μの時、F→∞ つまりどんなに力を加えてもツマメナイと言うわけです。
 

 アルミ棒を伝わる縦波の速さ (川田さん  

 眠れん棒の実験です。
 デジタルオシロを使うことで、楽に測定が可能です。

 アルミ棒を長さ方向に金槌でたたいて、棒に縦振動を起こさせます。この音をマイクで拾い、この音をコンピュータで定量解析します。

 使うソフトは振駆郎(ファイル名:Oscillo.exe)と音知(ファイル名:Fftrans.exe)です。
 録音した音を振駆郎で解析させると、波形及び周期、振動数情報がすぐにわかります。

 棒の長さ(l=67cm)と振動パターン( f=3770Hz、波長λ=2l )から、棒中での音速が求められます。

 V=fλ=5100m/s

 ついでにヤング率Eを求めてみます。
 V=(E/ρ)1/2  ,ρ=質量/体積   質量=310g 体積=1.2×1 0 -4m3

 これからE=V2・ρ=6.7×1010〔Pa〕を得る。 <参考>理科年表の値:7.0×1010〔Pa〕 
 簡単に良い精度の値を出すことができます。
  振駆郎の動作画面です。
 棒をたたいた直後は、倍振動が多く含まれます。この波形をフーリエ分解して、倍振動成分を表示してくれるソフトが「音知」です。
 
 さらに、倍振動を重ね合わせて、合成波形の音も聞くことができます。
 うまく使うと、ややこしい重ねあわせを短時間でコンピュータに全部やってもらうことができます。

 すでに、物理室にコンピュータは不可欠の存在になっていますね。
 <参考> 音の実験教室
 

 サツキ開花のメカニズムに迫る (伊藤さん  
 
 伊藤さんは、この研究で、平成24年度の「東レ理科教育賞」を受賞されました。おめでとうございます。

 伊藤さん自身でまとめたレポートがあります。
 

 水中の光速度測定 (林さん  

 緑色LEDでの光速度測定に成功した林さん。今度は水中での光速度測定を可能にしました。フィゾーからフーコーへ。マイケルソン・モーレーの実験まで視野に入ってきました。

 <参考> 卓上型光速度測定装置3 (林さん)            

 波長が長いと、水中での減衰が大きいので、波長の短い青色のほうが良いのですが、検出部のフォトダイオートが波長が長いほうが感度が高く、短いほうでの感度でうまく検出できるか不安なところがありました。が、やってみると、案ずるより産むが易し、でうまく測れることがわかりました。
  
 リフレクターで反射させ、空気中での往復の時間と、水中での往復の時間を計ります。  LEDが青に変わりました。
 

 塩ビ管の前にリフレクターをおいて、2つの検出器の位相を合わせておきます。
 この状態で、リフレクターを管の反対側におき、塩ビ管を光が往復する時間で位相がどれだけずれるかを測定します。
(このデータで空気中での光速度を出すことができます)
 塩ビ管に水を入れ、同様の測定をします。今度は水中を往復する時間で位相がどれだけずれるかを測定します。
 塩ビ管の長さは2.25m。
 空気中での往復の時間は15.6ns。 よって空気中での光速度は
  c=4.50/(15.6×10-9)     
   =2.88×108 m/s 

 水中での往復の時間は21.2ns。 よって水中の光速度は
  c’=4.50/(21.2×10-9
    =2.12×108 m/s

 水の屈折率は n=21.2/15.6=1.36
  空気中での位相差、つまり時間差(15.6ns)を示しています。    水中での位相差、つまり時間差(21.2ns)を示しています。
 

 今回は、短時間で測定したので、リフレクターの位置あわせや、目盛りの読み取り等に誤差があると思われますから、3桁の精度は難しいと思います。それでも、水の屈折率は、まあまあの値が出ているといえそうです。
 林さんの話では、じっくり測定すれば、3桁の精度は出せるとのこと。
 
  

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