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「それからもう一つ。これは手品のコツなんですけど、ミスディレクション誤認誘導といいます。間違った方へ観客を誘導して行くテクニックなんです。特に日本の子どもはすぐ騙される。これは日本の教育レベルが高いからだと思います。海外でやったら全然違いました。日本の場合は先生がはいってやったら(黒板を指差す)、だいたいここ見ます。だから指差すだけでいいんです。
  皆さんも自分のカードでやってみてください。『5がありますね』(5のカードを指差す)。皆そこを見ますから。その次に裏向いてるカードを指差して、『後ろを向いてるカードは?』子どもたちは今度は裏向きのカードに目が移ります。そこで初めてくるっと裏返して、『7だね』(7のカードを指差す)ってやります。大丈夫です。100%『うん、うん』ってうなずきますから。
  『残ったカードは何?』って聞くんです。相手はもう5って答えるに決まってるから、後ろでくるっと裏返して、5を上に向けて待ってるんですね。『5』って言うから、『いやいや、5はこっちでしょう』って(5のカードを前に出す)。そうすると、あたかも瞬間的にカードが移動したように見えるんです。」



「『分かるかな、分からないかな?じゃあもう一回いくよ』って言って、また同じことを繰り返すんです。『5がありますね。後ろを向いてるカードは?あ、7だね。7を後ろに持っていくんだよ。はい、残ったカードは?』
  子どもはやっぱり『5』って言いますけどね、中学生くらいになってくるとひねくれますから、『7』って言います。その時は『いやいや、7持ってったじゃん(後ろから7を出して見せる)』そうするとしょうがないから『5』って言うんです。そこで『5はこっちでしょう』って後ろから5を出して見せる。
  それでは、今から先ほどの[キャラクター名]と一緒です。隣の方でも前後の方でもOKです。一人はマジシャン、一人は子どもになってちょっと練習してください。」



「ではこっち向いてください。よくやる失敗例を今からお見せします。先ほど私こちらから見ていましたが、何人かの方が気付かずにこうしておられました。
  いいですか、よく見ててくださいね。『5がありますね。後ろを向いてるカードは?7だね。7を後ろに持っていくと』ってこうしてるんです(7を後ろに持っていく途中で5が見えている)
  まあ、これはこれでたいていびっくりすると思いますけど。『見てはいけないものを見てしまった』って。そうではなくて、手品で驚かせたいわけですから。7を後ろに持っていくときは、後ろを見せてはいけませんよ。7の面しか見せてはいけません、絶対にね。これはしっかり守ってください。」



「それからこれ、うちの女房がそうでしたけども、疑り深い人間なんです。私が十数年間ずっと女房を騙し続けるものですから、もう僕が言ったことは全く信用してません。ですから、この手品を僕がやったときもそうでした。
  『5がありますね、後ろのカードは7だね。7を持っていったよ。はい、残ったカードは何?』って聞くと、すぐ答えないんです。『どうせこの人のことだから、また手品のこと考えてんねんやろ。5じゃないし、その裏をかいて7。裏の裏をかいて5か』って考えよるんです。
  そうするとね、すぐ答えないと、待ってるほうはイライラするんです。『はよ答えろや』ってついつい後ろでこんなやってカードを回してしまうんです。自分でもどっちがどっちか分からなくなる。これは非常にね、まずい状態です。人間って本当に焦るととんでもないことをする。」



「僕がやったのはね、うっかりこっち(両面裏のカード)を開けたことあります。自分が一番驚いた。そういう風にならないようにね。必ず両面裏のカードは『これは何?』って聞くけど、相手がどう答えても、見せるのは必ず両面表のカードです。当たり前ですけど、死んでも両面裏は開けてはいけない。
  で、最初にも言いましたが、これは別に手品をしてびっくりさせたいっていうことだけが目的ではなくて、今日はしっかりちゃんと話を聞いてちゃんと先生の手元を見て考えてたら、僕でも私でもちゃんと答えが分かるな、ということを体験させたいんです。だから僕はしつこく、全員クラスが分かるまで延々とやります。
  さっきも言いましたが、5年生のレベルで大体本当に5回やったら気付きます、全員。子どもの方があまり既成概念がないから、トランプの裏表ってあまり思わないんですね。まあ、すぐに使ってみてください。」



「それでは、この色画用紙3枚出してください(黄色、水色、黒の色画用紙を取り出す)昔からある科学手品なんですが、私はこのアイデアを滋賀県の総合教育センターの地学の指導主事の先生に教えていただきました。
  小学生がよくやる理科の質問で、なぜ夜だけお星様って見えるの?って聞く子が多いんです。それをこのたった3枚の色画用紙で証明して見せようという科学手品ですね。
  まず黄色い画用紙を目の前に上げていただく。これは小学校6年生の理科の教科書からコピーとっただけです。夏の大三角形。
  これ、夜の状態です。夜はお星様がよく見えます。当たり前、何も邪魔しないから。」



「ところが昼間は青空なので、青色の色画用紙を重ねましょう。そうしたらお星様は見えなくなりました。ものすごく目の良い子はうっすら見えるかもしれません。
  しかし皆さんは手触りで分かったでしょう。明らかに水色の色画用紙の方がちょっと分厚くしてある。簡単には見えないようにしてある。」



「そこで『魔法の望遠鏡を作りましょう』と言います。黒い画用紙をくるくると丸めさせます。だいたい太さはちくわくらい。
  (水色の画用紙に丸めた黒の画用紙を)ぴたっとくっつけて、天井、明るいライトの方を見ていただくと見えなかった星が見えてくるんです。
  (歓声が上がる)
  小学生と同じリアクションをありがとうございます。
  もちろん星というのは、自ら光を発しているものもあれば、反射して光ってるだけのものもあるので、星が光ってる精密な説明ではありません。でも、なんで夜にだけお星様が見えるんですかっていう子どもの問いかけに対しては非常に本質的に答えている実験ですね。昼間も私たちの頭の上にお星様は出てるんだよ。でも昼間は太陽の光が明るすぎるから見えないだけなんだね。夜になって太陽の光が暗くなったので見えてきた。
  夜になったら突然『こんにちは』と星が上がってきて、朝になったら『さようなら』って引っ込むと子どもは思ってますけども、実はそうではないんだよ、という簡単な説明でございます。」


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