例会速報 2013/04/14 東洋英和女学院
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授業研究:授業開き みんなの発表
武捨さんの授業開きは中学2年の電気回路から。
年間予定や授業の進め方を簡単に説明し、早速はじめの課題に入った。豆電球と電池を導線2本でつないで光らせるという問いである。
昨年まではデジカメやビデオカメラをケーブルでモニターにつないで色々と演示をしていたが、無線ルータを使ってスマホやノートパソコンの画面をワイヤレスにモニターで演示する方法(AppleTVを使う)を試してみた。うまくいけばケーブルを気にせず動けたり、授業展開の幅が広がりそうである。
相模大野高校・相模原中等教育学校の理科の授業開き。.
6年制の中高一貫校に生まれ変わろうとしている本校には、現在、高校3年生と中等1~5年生が学んでいる。「授業開き」では、昨年に引き続き「はじめに、ニワトリの姿を思い浮かべてスケッチさせ、次に、実際のニワトリの写真を見ながらスケッチさせる」ことを実施した。昨年もこのスケッチを経験していて、その後「鳥類の特徴」を学習した中2生には、さすがに足を4本書いた生徒はいなかった。
しかし、昨年、「ニワトリの足が、思いの外、太く長かった」ことに驚いていたはずなのに、またもや半数近くの生徒が足を細い線で描いた。高3物理選択者(35名)は初めて「スケッチ」を経験したが、2名の生徒が足を4本書いた。この結果は、「幼少期にすり込まれた感覚を払拭させることが、いかに困難であるか」を顕著に示している。
鈴木さんは物理基礎の冒頭の力学の導入のプリントを紹介してくれた。以下、鈴木さんのコメント。
今年度は、昨年から非常勤講師に来ていただいている、東京物理サークルの浦辺悦夫さんと二人で高校1年の必修の物理基礎を受け持つことになった。その授業をどうするかを、3月から春休みにかけて、丸3日ほど二人で議論して、授業に臨んでいる。大筋の流れは一致して共通の授業展開をすることにしているが、抗力の扱いなど詳細では一致をみないところがあり、それはそれぞれのやり方でやるという予定。浦辺さんも鈴木も、毎日の授業が科教協の分科会や例会のような感覚で、楽しくて仕方がない。今後も、例会などで報告できればと思う。
小河原さんは、ルールと目標を説明するために、具体的な事例を挙げている。
まず、「参加することの大切さ」を訴えるために、話を聞いただけではわからない実験として、視覚について体感させる。1. 盲点がある、2. 中央だけ色を感じる、3.
狭い範囲の中央だけ文字が読めるという3つの実験を通して、参加し体験することを促していく。
次に、「暗記ではなく理解する」という目標を示す例として、車用信号の右側は何色かと問う。すると、何となく正答できる生徒が多いが、理由を問うと出てこないクラスが大半である。歩道の街路樹などの障害物で隠れにくいよう赤が右側であることを説明すると、頷く生徒が多いとのこと。
職場の大先輩からの「一年間の労力の半分を最初の三週間に注げ」との教えを大切に、試行錯誤して組み立てているそうだ。
車田さんの授業開きは次のように展開した。
1.授業ノート:前年度の授業ノートを回覧しつつ、授業ノートの説明。
2.色変わり実験:今年度は持ち時間の半分が化学基礎のため、色変わり実験を見せて化学の醍醐味を紹介した。コカコーラのペットボトルに水を入れ、予め絵具で赤・青・黄色の色をつけ、うがい液を加えてコーラ色にする。ふたの裏にハイポ(カルキ抜き)をボンドで貼っておき、縦におもいっきり一回振ると一瞬で、逆さにしてゆっくり振れば徐々に色が変わる。これは毎回生徒に受ける。
3.自己紹介:車田さんは数学を24年教えてきて、5年前に理科の教員になった。理科の教員になった理由は、数学は定理や方程式の解法にとどまるが、グラフや方程式には意味があることや自然現象などを理解することに発展させたいからだと生徒に伝える。英語で「理科」は何というか?と生徒に問うと、「科学」「サイエンス」と返ってくる。高校の理科は大きく「物理」「化学」「生物」「地学」に分かれるが、車田さんは「数学」「情報」の免許も加えて、真の「サイエンスティーチャー」であると自己紹介している。
4月12日が授業開きのクラスでは、「今日は何の日?」と尋ねた。「ユーリー・ガガーリン」が人類で初めて宇宙をとんだ日で「ユーリーズ ナイト」と呼ばれる。世界中でガガーリンの業績を称える日だ。スペースシャトル初飛行もこの日である。この日に限っては、北朝鮮からのミサイル発射は絶対ないと言い切った。
市江さんの今年の授業開きは、力や圧力の学習に先立って、魚釣り浮沈子の作製を行った。単元の配列を大幅に変更しているため、中学3年生で初めて力を扱い、1学期間で、中学3年間の力学分野をほぼすべて扱う予定になっている。
2時間目に浮沈子の原理を書かせてみると、学習前にもかかわらず詳しく説明が書ける生徒が予想以上に多かった。昨年度から続けてきた、説明することに重点を置いた指導の成果が実感できた。「知っている < 解ける < わかる < 説明できる」という順番をつけ、問題が解けるだけでは不十分、説明ができるようになろうと呼びかけている。「解ける < わかる」は見解が分かれるところではあるが、中学受験をしてきている生徒は、かなりの割合で「解ける < わかる」ではないだろうか。
説明することに慣れることで、中学受験で身につけた断片的な知識を結びつけ、生きた知識にすることができる。今後の力や圧力についての学習で用語の意味や概念を正しく修正すれば、かなり込み入った議論もできるようになると期待している。今後の彼らの成長が楽しみだ。
今回ホスト校の長舩さんの授業紹介。中高一貫の東洋英和女学院ではシラバスを作成して生徒に配布しているので、初回はそれに沿って内容や年間スケジュールを確認している。さらに高校生には、受験に向けてかなり私見的なアドバイス、問題集・参考書を紹介する。
アドバイスとしては、多数派になって安心感を求めるよりも、しっかり信じるものを決めて、少数派になっても揺るがずに継続する方が自然と結果がついてくるという内容。その後は授業内容に入る。
写真右は長舩さん自作の小道具。よく問題でとりあげられるバネの力のつりあいの3パターンを同時に観察できる小道具である。自作したものは多くはないが、高校生はあまり生徒実験ができずにいるので、なるべく現物を用意して演示しながら授業を展開していきたいと思っている。
消える一万円 越さんの発表
ダイソーの「おもちゃの1万円」(写真左)は本物より一回り小さく、中央に「玩具銀行」と書いてあるが、両面印刷で本物そっくり。うっかり本物とまちがえて使わないように注意が必要なほどよくできている。
さて、このおもちゃの1万円札をチャック付のポリ袋に入れたもの(写真右の右側)と、ラミネートしたもの(同左側)を用意し、2012年9月例会や2013年1月例会でも紹介された「全反射を応用した遊び」をやってみる。
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水を入れた紙コップに入れると、ポリ袋の方は全反射により中の1万円札が見事に消える(写真左)。ラミネートの方は、お札とラミネートフィルムの間に空気の層がなく、全反射が起こらないので消えない。
また、このおもちゃの1万円札を半分に折り、折り目をほぼ直角にした状態で角の部分にコインをのせ、そのまま静かにお札を開いていくと、ほぼ一直線に開いた状態にたってもコインは落ちない(写真右)。開いていく時、常にコインの重心が近い側は摩擦が大きく滑らず、反対側が滑っていくためである。
このおもちゃの一万円札は反射神経測定の実験などにも手軽に使えそうだ。
魔法のじゅうたん 越さんの発表
テンヨーの「魔法のじゅうたん」(テンヨー 定価2940円、ビックカメラで2350円)はマイクロプリズムによる分光視差方式の立体視(クロマデプス3D)を利用した科学マジックで面白い。メガネをかけて斜め上方から見ると、オレンジ色の紙のじゅうたんは、背景の青色のドットに比べ手前に浮き出て見えるため、あたかも十数cmほど宙に浮いているように見える。
なお、クロマデプス3DはYPC例会でも過去何度か紹介されている。
1997年11月例会:http://www2.hamajima.co.jp/~tenjin/ypc/ypc97y.htm
1998年 1月例会:http://www2.hamajima.co.jp/~tenjin/ypc/ypc981.htm
2011年 6月例会:http://www2.hamajima.co.jp/~tenjin/ypc/ypc116.htm
左の写真は、比較のため実験室にあった色とりどりの木のおもちゃを並べてみたところ。写真左上隅の青黒のチェックの四角柱の厚紙は、じゅうたんが浮いて見える高さの目安を知るための付属品である。
メガネをかけている人が左右に動くとじゅうたんも背景に対して左右に動き、浮遊感が増す。もう少し大きな物を作れば、文化祭などでも面白い発表になるかもしれない。
オビ・クリップ・ワゴムの手品 車田さんの発表
上質紙などを幅3cmぐらいに切った帯、ゼムクリップ2個、輪ゴムでできる手品の紹介。誰にでも簡単にできるが、説明はなかなか難しい、数学の世界ではトポロジーと呼ばれる分野の実験である。車田さんは、かなり昔にどこかでみたおぼえがあるという。数学セミナー2013年4月号でケンブリッジ大学の時枝正先生も紹介している。
紙の帯を曲げて二箇所をゼムクリップでとめるだけ。帯の両端を引っ張ると、クリップがはじけて・・・・。次には右の写真のように帯の輪の片方に輪ゴムを通すと・・・・。答は書かない。身近な材料でできるので、各自ぜひやってみてほしい。
左下の写真のように輪ゴムの場所を変えると、上の2つの写真の現象の「足し算」になる。さらに輪ゴムを2本通して右下の写真のようにすると、どうなるだろう。これもぜひ試してみてほしい。クリップの向きも結果に影響するかもしれない。さて、一度実験した後で、もう一度やってみようとすると、クリップが外しにくいことに気が付く。
例会ではここまでの紹介だった。車田さんは次回例会では、「引き算」を実演してくれるそうだ。
Bru-ray DiscのSEM画像 喜多さんの発表
喜多さんは2012年10月例会でCDとDVDの走査型電子顕微鏡写真を撮影して見せてくれたが、今回はブルーレイディスクの電顕写真に挑戦した。写真上は記録前でトラックの帯が規則正しく並んでいる。下は記録後のもので、不規則にランドが形成されているのがわかる。
ブルーレイのトラックピッチは320nmなので、髪の毛の太さを80μmとすると、その中に250本のトラックが入る計算になる。
シリコンウエハ 喜多さんの発表
6inchのシリコンウエハ(ダミー)。シリコンの単結晶をスライスしたもので、LSIなどを形成する基板となる。表面は金属光沢を示し、鏡のように見える。喜多さんはこのシリコンウエハの共同購入計画を立てている。実費になるが少しお分けできるとのこと。ご希望の方は慶応高校物理科の喜多さんまでご連絡を。
ダイソーのマグネットテープ 山本の発表
授業で便利に使えそうな小物文具の紹介。ダイソーの「マグネットテープ」(品番マグネット357)105円。幅19mm、長さ3m、粘着剤付き。テープカッター付きでセロテープ感覚で使える手軽さ。数cmの長さに切り取って、掲示物の裏の四隅にセロテープのように貼るだけで、スチール黒板や冷蔵庫、ロッカーなどにぺたりと吸い付くようになる。
これまではマグネットシートを切断して活用したものだが、厚みがあって保管しにくい上、切ったり両面テープで貼ったり、枚数が多いと手間がかかった。この「マグネットテープ」なら厚さ0.3mmなので、巻いたり、貼ったままファイリングも可能。磁力はそれなりに弱いが、写真の矢印部分のように重ね張りしても落ちない程度なので十分実用的。
折り紙で放物線3 水上さんの発表
放物線y=(1/4p)・x^2で、準線y=-p上の任意の点(α,-p)と焦点P(0,p)が重なるように折ると、その折り線は放物線上の点(α,(1/4p)・α^2)における接線になる。左側の写真から、放物線y=x^2で準線上の点I(2,-1/4)と焦点P(0,1/4)が重なるよう折ると、その折り線が放物線上の点I´(2,4)において接しており、その傾きは4であることを確認できる。また、微分を学習した生徒には、どの折り線も傾きが向きがy=x^2のx=αにおける微分係数2αと一致することを確認させている。
水上さんは、過去2回の例会参加者の意見を踏まえて、好みのタイプを利用できるように今回は4種類のプリント(y=x^2用とy=1/16x^2用の,それぞれ「座標軸と目盛りのみで放物線なし」と「放物線付き」)を用意して紹介してくれた。
上昇する気球から石を落とす実験の映像 水上さんの発表
2012年10月例会における意見をもとにした改良版である。casioのEX-F1は高速度映像撮影中にはズームできないので映像を2つに分けた。
1つ目は装置の原理を説明するための映像。横に張ったスイッチ代わりの導線を手で跳ね上げると電磁石が切れ、同時に電磁石と並列に接続したネオン管がコイルに発生する逆起電力によってピカッと光る(写真左)。そして鉄球が落下していく(写真右)。
2つ目は上昇中の「気球」から物体を落とすときの映像だ。物体(鉄球)は手ばなされたときの気球(手で持った電磁石)の速度で上向きに投げ出されていることが分かる。
エアトラックの等加速度運動 水上さんの発表
エアートラックの斜面上を往復するライダーの映像と解析用授業プリントの紹介である。生徒に斜面上を往復する物体の普通速映像からx-t図とυ―t図を描かせ、「斜面がなめらかな場合、上りと下りは別の運動でなく加速度が一定の一つながりの運動で、最高点で速度υ=0である。」ことを実感させるの。左側の写真のように映像を黒板貼り付け書込み式スクリーンに投影し、コマ送りにより15コマ(0.5秒)ごとの物差し上の位置と値をスクリーンに記入し、これを解析させる。
左は同じデータを入力すると直線近似されたυ―t図が描かれるエクセルシートである。生徒が授業プリントで描いたυ―t図と同じになることを確認しておく。これ以後の授業で自由落下や動摩擦力により減速する物体の運動などのυ―t図が直線になることを、このシートを利用して生徒に示してから公式を導くための布石である。イージーセンスなどの代用である。
今月のYPCニュースに、この項目の詳しい説明と記入済みの授業プリントが掲載されている。
みんなで学ぶ放射線副読本 鈴木さんの書籍紹介
福島大学の後藤忍先生による、「文科省版放射線副読本」に対してきちんとした事実や知識を教えるように作られた本です。後藤忍さんは、4月21日に神奈川学園で行われた「神奈川の理科教育を考える集い」に講師としてお招きしたが、とても論理的で説得力のある講演だった。後藤さんの姿勢や論理的な展開を、この本でも感じることができる。原子力問題を考える上で、必携の本だ。ぜひお手元に。
二次会 六本木駅前「たん丸」にて
14人が参加してカンパーイ!。昨年6月の例会でもお世話になった「たん丸」さんにまた休日特別開店していただいた。充実の料理をリーズナブルなお値段で提供していただき、一同大いに満足。今年度も張り切っていこう!
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