例会速報 2021/07/25 Zoomによるオンラインミーティング


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授業研究:熱力学 長倉さんの発表
 長倉さんは 初めて高3物理を持つことになり、高校3年生の熱力学の授業実践報告をしてくれた。
 状態方程式までは、興味を持たせるため、YPCで教えてもらった[ゴムピタくん]や[超撥水シートを使った浮力の実験]、[真空マシュマロの実験]なども取り入れた。気体分子運動論や気体の熱力学過程については、教科書を参考にしながら、授業プリントを使って、丁寧な説明と細かい問題演習を心がけた。
 しかし「定圧モル比熱って覚えた方がいいですか?」「気体分子運動論の式はどれ覚えればいいのですか?」などといった、受験を意識した生徒からの質問にはうまく答えられず、「教科書に書いてあるから...」といったモチベーションで授業をしていた部分もあった。
 

 例会では、実験へのアイディアや、気体分子運動論の動機付けについて、参加者からアドバイスがあった。また、問題演習に関する意見交換もあった。各校の実態や生徒のニーズに合わせて、どの程度演習を扱うか、いわゆる"公式"をどの順序で示すかについても議論された。
 以下は、発表を終えての長倉さん自身の感想。
  「物理は、観察実験をもとに理論を構築することを楽しむ分野と、論理で理論を構築することを楽しむ分野があり、気体分子運動論は後者だ」、「熱運動の激しさが温度だけで表すことができるようになるという結果や、各モル比熱が一致することの面白さはぜひ伝えたい」などといった、教材観に関するアドバイスは、とても参考になった。一人で教材研究をしていても、なかなかこうしたことには気づけない。学ぶモチベーションや何を伝えたいかは、もう一度しっかり考えたい。時間が限られた中だと問題演習と生徒の活動はトレードオフの関係になってしまうが、生徒に合わせて授業内容のバランスを考えることこそ教員がやるべきことだと改めて思った。
 

ピップエレキバンとチョークコイルによる気体分子運動模型 天野さんの紹介
 天野さんが紹介してくれたのは、磁気治療器「ピップエレキバン」の小型フェライト磁石を気体分子に見立てた「気体分子運動のモデル実験」である。構造は単純、電源として1Aスライダック(写真左)を用い、チョークコイル(現在は入手困難・電源トランスで代用できる?)を直接接続して振動磁場を作り、小磁石を駆動する。
 チョークコイルは、カバーを外し、鉄心板の一部を取り去って、「Ш」の字の形にする(写真右)。フィルムケースにピップエレキバンの小磁石を4つ入れ、発砲スチロール製の浮き蓋を仕込む。ケースのふたには小穴をあけ、浮き蓋に刺したつまようじのガイドにする。
 

 左は装置をセットアップしたところ。小磁石は4個ともくっつき合って、フィルムケースの底に横たわっている。スライダックのつまみを回して電流を増していくと、小磁石はケース内で暴れはじめ、やがて結合が切れて個別に飛び回り始める。すると浮き蓋のピストンが次第に上昇してくる(写真右)。気体膨張のモデルだ。簡単にできて、なかなか面白い演示実験だ。
 天野さんはこの実験を、20年ぐらい前に教育センターの研修で教わったのだという。残念ながら当時の講師や出典の資料が思い出せない。この実験のオリジナルをご存じの方はぜひ情報をお寄せいただきたい。
 なお、天野さんは一回り大きいスライダックで追実験をしたところ、電流が1Aを越え、チョークコイルの耐電流を越えそうになり、発煙したという。電流の流しすぎには十分注意してほしい。天野さんは、今入手し易い材料での再現をさらに検討している。
 

Wordの書き込み式プリントに使える方眼紙を簡単に作る方法 櫻井さんの発表
 櫻井さんは、自由に方眼の数を設定できるsvg形式の方眼紙画像について発表し、ファイルの共有をしてくれた。
 svgは画像の形式の一つで、ファイルの中身は画像のベクタ情報をXMLで記述したテキストファイルである。そのため、シンプルな図形やその繰り返しによってできる画像であれば、スクリプトを直書きすることで作成可能だ。また、WordはSVG形式の画像をサポートしており、他の画像と同じように直接ペーストしたり、画像の挿入を実行できる。
 以上から、XMLで好きな大きさの方眼紙を作り、それを自作のプリントに貼りつけて使用することは極めて容易だ。今回、櫻井さんが配付してくれたサンプルの方眼紙svgファイルは、メモ帳などのテキストエディタで、サイズを表す2箇所の値を書き換えるだけで、方眼の数を自由に変更できる。
 サンプル方眼紙ファイル(svgファイル:0.6KB)のダウンロードはこちらから。→graphpaperW8H6.svg
 

 方眼紙をスキャンすれば歪みや影が出るだろうし、自分で線をたくさん引いて作成するのは面倒な方眼紙だが、この方法なら簡単に正確な方眼紙画像を作成できる。しかもベクタ形式画像なので拡縮に強い。書き込み式のプリントやテストの解答用紙に、ジャストフィットする方眼紙画像が必要な時に、思い出して使ってみてほしい。
 配布したSVG画像についての詳しい説明と、実際にWordに貼り付けるまでの方法は、こちら
 

markdownがすごい! 長倉さんの発表
 長倉さんは、授業プリントと授業用のスライドは、内容はほぼ同じなので、なんとか楽に作業を進めたいと思った。Texやhtmlでの授業プリントの作成も試みたが、タグの記述の手間を考えると、Wordよりも楽とは言えなかった。
 そんな中、櫻井さんからmarkdownというマークアップ言語を教えてもらって、長倉さんはその便利さに感動した。行頭に#をつけるだけで見出しとして認識してくれる。Visual studio codeというエディタの拡張機能を利用すれば、見出しの階層構造を元に、スライドを自動で作成してくれる。
 夏以降はmarkdownで授業プリントを作りたいと思ったので、長倉さんは今までWordやPowerPointで作成した授業資料をmarkdownに変換するスクリプトを開発した。リンクはここ。→https://github.com/phys-ken/docx_pptx2md
 長倉さんの発表資料(PDFファイル:1.0MB)はここ。←ここに具体的な記述のしかたや出力例が載っている。実は、上の櫻井さんの資料もmarkdownで書かれたものだ。
 

二酸化炭素で気柱共鳴 長舩さんの発表
 水位を変える気柱共鳴実験器で媒質(管内の気体)を二酸化炭素にして共鳴点を測定し、二酸化炭素中の音速を求める実験報告である。長舩さんは、音源は440Hzにしてスピーカーとスマホ(Keuwlsoft社の無料スマホアプリFunction Generator)を使用した。スマホでも十分可能とアドバイスを受け、実際にやってみてそのことを体感できたという。

 さて、手順は空気で共鳴点を測定した後に二酸化炭素を充填して、水面を上昇させて第2共鳴点から測定していく。これで空気のときと比較ができる。結果は左の表の通りである。室温は約26℃、二酸化炭素の音速Vを求める理論値の式は V〔m/s〕=258.9+0.5t〔℃〕を用いた。
 二酸化炭素としてガスボンベ、ドライアイス、入浴剤(バブや温泡)を使用したが、どれを選んでも大丈夫そうである。ドライアイスは、パウダー状になるまで砕くと管をつまらせてしまい破損するかと慌てたので、管に入る程度の数cmの欠片サイズが安全である。

 ところで、ドライアイスの場合の音速の変化は、本当に媒質の変化のためか、冷えて温度変化の影響はないのかということが気になったので温度測定(ナリカのイージーセンスを使用)をした。白くモクモクしているときは水面付近で1桁の温度まで下がっていたが、欠片がなくなる頃にはモクモクもなくなった。そのとき、結果Bにおいて水面付近(58.5cm)は22.7℃だった。約8分後には、水面付近で25.6℃、5.0cmで26.1℃となり、室温同等になったので測定を開始した。結果Cの温度測定も同様だった。よって、ドライアイスがなくなって8~10分も待てば室温で処理して問題ないと言えるだろう。
 

 開口端補正を計算してみると、下の表の通りだった。空気のときに約1.5cmだったので、それに比べると小さい値になることが多いと分かった。例会では、これを開口端補正として扱ってよいだろうかという話題になった。できるなら袋などで蓋をして二酸化炭素のみで測定することで吟味ができるのではないかという提案があり、試してみようと思った。
 なお、この実験は、物理教育研究会(APEJ)主催の「基本実験講習会(9/26)」の教材である。興味のある方は是非ご参加いただきたい。
 

Zoomの第2コンテンツとして「スマホをワイヤレスで繋ぐ」 古谷さんの発表
 古谷さんは、Zoomで開催される科教協大会のお楽しみ広場にエントリ-をしたことをきっかけに、いろいろ技術研究を試み、新たな発見があったのでその発見の内容、並びに取り組みの経過を報告してくれた。
 参加者に「工作物や製作過程をできる限り明瞭な映像で見せたい」、普段のZoom例会ではカメラの前に突き出し、「これです」と言いながら紹介することが多い。しかし、その方法ではカメラの性能(およそ200万画素程度)に依存し、参加者は大まかに把握することしかできない。
 

 参加者がストレスなく画面を見ていられる方法は無いか、を考えた。たまたまZoomの解説本の中に、「画面共有」の詳細に「第2カメラのコンテンツ」の存在を知ったこと。
 またスマホをカメラとしてワイアレスでパソコンに接続する「iVcam」というアプリの存在も知った。アプリ(結局のところ有料版にした)はスマホとパソコンの両方にインストールが必要であることや双方のコネクトに手間取ったが、高性能なスマホのカメラを「書画カメラ」として活用することができ、当初の目的を120%達成できたと思っている。なお、このアプリには、画面の上下・左右切り替えを始め、スマホのフラッシュライトの点灯等いくつかの機能があり、それをスマホ本体に触れる事無く、PC側からマウスの操作で可能なのはとても便利である。
 

 方針が決まると、いろいろ欲が出て、スマホ用の撮影スタンドや、劣化したバッテリーを交換するツールなどを買い込むことになったが、これらの対策により、古谷さんの書斎はお楽しみ広場用のスタジオに変貌し、無事に科教協の大会を終えることができた。
 

学校の探求講座で錯視・立体視 鈴木健夫さんの発表
 鈴木さんの勤務校は、3年前から、夏の講習で高3以外に「探求講座」として教科に関連することだけでなく、教員が興味を持つことを生徒と一緒に探求していく講座を希望者対象に開催している。昨年はコロナですべて中止となったが、今年は例年よりも規模を縮小しながらも何とか開催した。鈴木さんは、2年前には「紙飛行機とブーメラン」の講座を開催し、その内容をYPCでも検討してもらって臨んだりした。今年は違う内容にしようと考えて、「錯視と立体視」というテーマにした。生徒は中1から高2までの12人だった。
 内容はほとんどYPCの例会で水野さん、市江さんや越さんたちが紹介してくれたことをそのままなぞった。また、参考文献として錯視や立体視の本などをそのまま使った。つまりオリジナリティはないのだが、生徒はとても意欲的で、興味を持って取り組んでくれたという。
 できればオリジナルのデザインのものを作るところまで行きたかったが、そこまではできず、立体視の写真を独自に撮ってそれをみんなに紹介するところまでだった。

 例会では、最後の日に成果物として各自の作品(実は生徒全員書籍の付録のキットそのままだが)をお互いに公表した時の動画が上映された。写真はその映像のスクリーンショットの一部である。この作品は、杉原厚吉著「立体トリックアート工作キットブック」金の星社(2012年)に収録されている「なんでも吸引四方向すべり台」。下は別の角度から見た種明かし。
 以下は、発表者の鈴木さん自身の感想。
 「私自身が楽しめるものと思いテーマを決めた。90分×4日間の講座だったが、90分の準備に8時間位かかる毎日だった。大変だったが、充実した時間を過ごせた!」

二次会Zoomによるオンライン二次会
 例会本体には30名、二次会には11名の参加があった。二次会はいつものように、ドリンク持参で自由な情報交換・意見交換が行われる。前半は阿部さんがこのたびサイフをはたいて購入したという、左図の卓上レーザーカッター(https://flux-japan.jp/products/beamo)や、市原さんが生徒と共に体験したという「島津ぶんせき体験スクール」に話題が集中した。
 後半は、Zoomの画面共有機能の中にある「ホワイトボード」(右図)をみんなで試してみた。うまく設定すると、一枚の同じホワイトボードに、複数の人が文字や図形を書き込むことができる。グループでの共同作業やブレインストーミングの整理に使えそうだが、設定のしかたや入り方など、まだ技術的な情報が不足していて十分使いこなせていない。もう少し勉強が必要のようだ。
 


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