例会速報 2018/07/22 三浦学苑高等学校


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YPC例会のもようを写真構成で速報します。写真で紹介できない発表内容もありますので、詳しくは月末発行のYPCニュースで。例会ごとに更新します。過去の例会のアルバムここ

授業研究:光の性質とその利用 伊藤さんの発表
 伊藤さんは、高校の「科学と人間生活」の光の性質とその利用についての単元の授業報告をしてくれた。
 伊藤さんは、身近な虹の色の問題を理解することを通して光の性質を理解させようと考え、以下の順序で授業を進めた。
第1時●光のスペクトル:虹について絵を描かせ,写真で確かめを行った。
第2時●光の重ね合わせ:高輝度LEDトーチライト(crazy fire製)を使って実際に色を重ね合わせてみた。高輝度なので普通教室でもできる。
第3時●簡易分光器の製作:教科書の型紙でCDを用いた簡易分光器を作ってスペクトルを観察する。
 

第4時●虹を人工的に作り出すことはできるか:快晴の日を狙って学校の中庭で行った。虹ビーズで人工虹をつくった。当日の授業の模様は、学校の公式twitterにも掲載された(写真右)。なお、実験に使用した「虹スクリーン」は、かつて「科学の祭典全国大会」にYPCが出展した「虹のトンネル」で使用した「壁紙」である。
 

第5時●光の反射・屈折:反射・屈折の法則を学習し、全反射の実験を行った。
第6時●光の回折・干渉:波特有の現象である回折と干渉、および横波の特徴である偏光について学んだ。
 

第7時●電磁波:紫外線に反応するものを紹介(回覧)した。たとえば次の物が蛍光を示す。パスポート・蛍光ペン・ドリンク剤・洗剤・パインアメ(写真上右)・トニックウォーター(写真下左)・サソリ(写真下右)・紙幣
 最後の蛍光の実験は、例会参加のメンバーの興味もひいた。サソリの蛍光は初めて見たという人が多かった。参加者からは、アドバイスと共にエールが送られ、伊藤さんはこれからも日々、精進していくと語った。
 

イタリア製のコマ 古谷さんの発表
 古谷さんは、南イタリアに旅行をしたときに独特の形をした大小ふたつの独楽を購入した。この独楽は、アルベロベッロという村で見た不思議な形の建物「トゥルッリ」に似せて作られている。その昔、家屋の税金を安くさせるために考え出した建築の方法、つまり屋根のない家である。屋根のように見える部分は取り外しが簡単にできる。つまり、役人が税金の取り立てに来たときは素早く石を外し、家としての要件を満たさない「壁」であると見せかけたそうな。
 

 建物の由来はともかく、この独楽は始めは斜めに回転していても、その後徐々に体勢を立て直し、あたかも静止しているかのごとく、軸が垂直に立つ、いわゆる「眠りゴマ」の状態に入り安定して回転する。動画(movファイル8.2MB)はここ

人が乗れるセブンブリッジ 車田浩道さんの発表
 かつて、喜多さんが発泡スチロール材で作ったセブンブリッジ(2000年9月慶応高校例会)を参考に作った復刻版。車田さんはこれを量産して分けてくれた。寸法などは、車田さんが科学博物館の物理教室で使ったPPスライドを参照のこと。
 

 かつては、東急ハンズで仕入れた10×10×50のサイズの硬質発泡スチロールを使っていた(2000年12月慶応高校例会)が、現在は手に入らないので、畳一畳ほどの建築材の断熱材を購入して10×10のサイズにカットしている。バンドソーで切断した断面がいい具合のザラザラ面になり、セブンブリッジを組むとちょうど摩擦がしっくりくる。重量級の天野さん(写真右)が乗っても大丈夫。
 

コップの音2種類 市原さんの発表
 市原さんは、子供と「コップを叩く」という遊びをしていて、叩く位置によって音の高さが違うことに気がついた。取っ手がついているコップを叩くときに、取っ手のついている側またはその向かいの側、そしてその軸に直交する側を叩くと、同じ高さの音が出る(写真左)。ところが、その間の45度の位置を叩くと、違う高さの音が出る。動画(movファイル5.3MB)はここ
 これに関して調べていると、京大おもろトーク番外編 「おもちゃモデル」という動画(写真右)に行き着いた。
 

 ついでに、「コップ 叩く 音」で検索していくと、「粉末ミルクを溶かしたときのカップの音」という話題にもたどり着いた。そこには、クリープを入れた直後にしばらくコップを叩いていると、次第に音の高さが上がっていく、と書いてある(写真左)。解説として、水中の空気が抜けていくときに状態が変わるのではないか、という説があった。
 そこで市原さんは、炭酸飲料を入れたマグカップにラムネを入れて、空気が抜けやすい状況を作った(写真右)。すると、実際に音の高さが変わっていく様子が確認できた。動画(movファイル7.5MB)はここ。コップを叩く、というテーブルマナー違反なことをすると、とても面白い、ということがよくわかった。
 

まいまいず井戸 市原さんの発表
 府中市郷土の森博物館に、「まいまいず井戸」なるものがある。かたつむりのように、渦を巻いて掘った井戸で、武蔵野台地あたりに見られ、埼玉や小平周辺には、たまにあるようである。関東ローム層の柔らかい地盤だと、まっすぐに井戸を掘ると崩れるため、すり鉢状に井戸を掘ったらしい。汲んだ水を運び上げるのに、急坂は負担なので、傾斜を緩くするために螺旋状の道をつけたという。地学的要素と物理的要素(仕事の原理)が合わせて見られ、話題として面白い。
 ちなみに、「まいまいず」の「ず」に、何か意味があるのかと調べて見たが、その地域でカタツムリのことを「まいまいず」と呼ぶことがある、ということしかわからなかった。徳島にも、同様の地形があるらしい。
 

百均のLEDロウソクの光を太陽電池に当てると 喜多さんの発表
 百均でよく見かけるLEDロウソク。電球色のLEDが不規則に明滅する。108円で2つ、一つ54円。一体どんな回路が入っているのだろうかと分解してみたら、LED自身の中にICチップが組み込まれていた。つまり、専用LEDと、ボタン電池と、スイッチしかない。安さの理由が分かった。
 LEDロウソクの発光パターンを音で聞く方法については、2017年12月の例会で土肥さんから報告があった。
 喜多さんは手許にあった太陽電池をたまたま、直接スピーカーにつないでみたら、小さいながら音がする。さらにアンプをつないでみたら、しっかりと音が確認できた。動画(movファイル2.6MB)はここ。ロウソクのゆらぎの間隔はどう考えても可聴音の領域ではない。オシロでみたら揺らぎのパターンの中に可聴領域の変化が見出された。
 

 一方下の写真は、秋月電子で扱っている三端子LEDキャンドルIC(ローソクIC)CDT3460-02で、同様の実験をしたものである。こちらはLED分離型である。動画(movファイル2.4MB)はここ
 例会後、喜多さんはセリアで扱っているLEDロウソクで同様の実験をした。点灯部白色タイプと点灯部透明タイプのものは、ダイソーのものと同じような音がするが、「ふっと、息で消せるLEDキャンドル」は、可聴領域の音はせず、プッ・プッという音となった。製品ごとに、いくつかの発光パターンがあるようである。
 

シャボン玉半球の虹 天野さんの発表
 天野さんはシャボン玉の表面に生じる光の薄膜干渉による縞模様を観察する工夫を紹介してくれた。下からライティングしている白いプラスチックトレーをシャボン液で濡らしておき、ガスホースをストロー代わりにしてその上にシャボン玉を吹くと、大きなシャボンの半球ができる。シャボン液は百均のもの。
 

 まわりを暗くして観察すると。下からの均一なライティングで、干渉縞がはっきりと見えてくる。てっぺんが薄くなり割れる寸前には、てっぺんから黒い領域が広がり始める。膜が薄すぎて可視光では干渉しなくなったためだ。シャボン玉は湿度が高い環境のほうが長持ちする。動画(movファイル22.3MB)はここ
 

一円玉製造器 車田里奈さんの発表
 「1円玉製造機」…という怪しい名前がついた錯視実験をご存じだろうか。円の中を18等分にして交互に白黒で塗りつぶしたパターンを水平に回すと灰色の円が見えるというものだ。実験者はこの紙を持つ指に一円玉を隠し持っておき、相手が「丸が見えた!」と言ったら一円玉から指を離すというマジックのような実験である。
 車田里奈さんは、先日、「フライングタイガー」というコペンハーゲンの雑貨を取り扱うところで一円玉製造機に似た模様のトレイ(¥250-)を見つけた。「これは、きっと使えるに違いない!」と思った車田さんは、思わずその場で実験を行った。その結果は…予想通り大きな錯視を見ることができた!
 元祖「一円玉製造機」は円が小さいので大人数で観察をすることは難しいが、このトレイは大きな錯視を見ることができるので大勢での観察に適している。真上から見た錯視と、横から見た錯視は少し見え方が違うので試してみてほしい。上手に見るコツは机に置いたまま素早く水平に回すことだ。視覚生理学的な現象なので、写真や動画ではうまく表現できないが、一応、動画1(movファイル2.8MB)はここ。動画2(movファイル2.7MB)はここ
 

12 ANGRY MEN 市江さんの発表
 2002年3月例会でも紹介されたヘンリー・フォンダ主演のクラシック映画である。父親殺しの容疑をかけられた少年の判決をめぐって12人の陪審員たちが議論を交わしていく。もちろん物理教育のための映画ではないが、市江さんは、無い時間を割いて生徒に見せている。
 誰にもわからない本当のことを突き詰めるために、懐疑的な視点がとても大切であることが実によく伝わる内容になっている。60年以上前の白黒字幕映画にも関わらず、生徒も楽しんでいた。不朽の名作という名に相応しい映画である。

二次会衣笠駅前「目利きの銀次」にて
 15名が参加して「カンパーイ!」。YPCの例会会場としては最南端に位置する三浦学苑での例会は盛況だった。工業科があるので工作機械が豊富でうらやましいとの声も聞かれた。実は理科実験室や準備室、あるいはそこに備えられている実験器具も、学校以外では得がたい環境で、それが自由に使えるのは教員の特権なのだ。環境を失うとそのありがたみがわかる。使えるうちにせいぜい活用することをおすすめする。


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