2009年5月23日(土)愛知工業高校での例会の記録です。
新型インフルエンザが日本でも感染を広げています。 |
ノイズキャンセリング (田中さん・船橋さん) |
音に、逆位相の音を重ねて打ち消してしまうヘッドフォンなどが販売されていますが、どこまできれいに消すことができるのか挑戦してみました。 | ||
右は発振器のコントロールパネル。田中さん設計の自作多機能発振器です。 ここから任意の振動数の正弦波を2つのスピーカーに出力します。切り替えスイッチで片方に送る信号を逆位相になるようにします。 2つのスピーカーを向かい合わせに配置して信号を送ります。同位相のときと逆位相のときを比べると、逆位相のときはかなり音が小さくなります。 完全に打ち消すのは難しい・・・・・。 その原因は、スピーカーの特性の違い、スピーカーボックスからの音のもれなどが考えられます。 |
打消しの障害を克服すれば完全に消音可能でしょうか。 そこで、田中さんが一工夫。 2つの発振器を用意して、それぞれから音をだし、各スピーカーへの信号をオシロで確認します。 |
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このままでは同じ振動数の音を出しますが、2つの音の重なりの位相はばらばらです。 しかし、この発振器は、なんと位相差をコントロールできるのです。 片方の発振器が他方にスタート信号を出し、自身は位相差に応じた時間の遅れの後、発振を開始する仕組みになっているのです。 遅れの時間をコントロールすることで、任意の位相差を作り出せます。 すごい! |
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位相差0。 音が大きくなります。 |
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位相差90度。 0度に比べやや小さくなります。 |
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位相差180度。 音はうんと小さくなります。 |
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スピーカーボックスをしっかりしたものにして、容器からの音の漏れを小さくすれば、もっと消音が可能かもしれません。 スピーカーを向かい合わせにしなくてもいいのではの声があり、やってみました。 逆位相の波源が並ぶことになり、これでも音は小さくなりますが、場所によっては音が小さくならないところが出ます。干渉の問題ですね。 学習者にわかりにくい位相も、こんな装置を使って体験しながら学ぶことで、より深い理解ができそうな気がします。 それにしてもすごい発振器です。 |
炊飯器で熱の学習 (臼井さん) |
新しい炊飯器を購入したので、古い炊飯器を分解してみました。 鍋の加熱はジュール熱ではなく、IHヒーター(電磁誘導加熱)でした。 |
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磁気発生コイルのそばにサーチコイルを置いて、動作周波数を調べてみました。 周波数は約22KHzぐらいです。 |
リード線でサーチコイル作成。 |
本体底にもぐりこませます。 |
どうしてこの周波数をつかっているのでしょうか。 本当のところはわかりませんが、この周波数だと、コイル等が物理的な振動を起こしても人間に聞こえないからではないかという考えがでました。 電流から熱エネルギーへの変換効率の問題もあるかもしれません。 |
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鍋の方で計測できるだろうかという声が出たので早速実験。 鍋に水を入れておかないと安全装置が働いて動作しません。よくできていますね。 測定してみると、オシロのレンジで 1/100 の値しか出ません。磁気コイルのエネルギーはかなりの高効率で鍋の熱に変わっているようです。 |
当初の目論見は、電源側で、電流値を測り、消費電力を計算し、次に鍋(+水)の温度変化を放射温度計で測定し発熱量を計算し、その一致を確認するというものでした。 でも、実行前に数々の疑問が噴出してきました。 |
放射温度計は簡単に温度が測れますが、いったい何を測定しているのだろうということです。 試しに、懐中電灯、テレビのリモコン(赤外線が出ている!)、ろうそくの炎を測ってみましたが、それらしき温度になりません。 井階さんが、愛工にある高性能放射温度計の紹介とともに、測定原理について解説してくれました。 ある特定の波長のエネルギーを測り、理想黒体(放射効率100%の理想的な物体)を基準に温度を算出しているようです。それ以外の通常の物体では個々の放射率に合わせて補正を行わなければなりません。 |
つまり、温度計の表示をいつでも信用してはならないということです。何を測定しているかで補正を行わなければならないということです。 実験では、普通の温度計で測ったほうが簡単かも・・・・ |
愛工にある高性能放射温度計。 装置によって測定できる温度範囲が異なる。 |
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<参考>http://www2.hamajima.co.jp/ikiikiwakuwaku/record/r_2005_12_03/newpage2.htm 放射温度計で温度変化を測る |
ガイガーカウンタ (林さん) |
ガイガーカウンタを作りました。 フィルムケースの内側に紙をはり(負極)、中心に細い銅線(正極)を通します。この両極に高電圧(4000V程度)をかけた状態で計数管として使います。 管の内部にブタノール蒸気を充填することが多いですが、今回はエタノール蒸気を使っています。エタノールの液を内部に綿棒で塗り、ラップでふたをすれば十分実用になります。 β線を出す放射性物質を上部にかざすと、ラジオ(AM受信状態)からパチパチと放電の音が聞こえます。 管の内部をβ線が通ることにより、電離作用で内部の気体が電離し、正極に向かって電子雪崩が起こり、それが電極に達すると放電パルス電流が流れます。このとき発生した電磁波をラジオで聞いています。 |
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フィルムケース利用の計数管 |
コッククロフトウォルトン回路を利用した高圧電源(4000V) |
放射性物質としては、ランタンマントルが利用できます。 ただし、同じ目的の製品でも、会社によって、製造時期によって、放射線が出ないものもあります。 |
昔は利用できたマントルですが・・・。 |
この製品は利用できました。 |
他の電源利用はどうかということで試してみました。 摩擦電気をコンデンサに蓄て高圧電源とします。(湿度のためか失敗!) 臼井さんの手持ちの小型高圧発生器でも試してみました。サークルではおなじみの安価な小型高圧電源です。 (成功!) |
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<参考>http://www2.hamajima.co.jp/ikiikiwakuwaku/record/r_2006_10_29/newpage.htm Open Air GM Counter Made From Film Case http://www2.hamajima.co.jp/ikiikiwakuwaku/record/r_2002_12_07/newpage2.htm 音で聞く放射能検知装置 |
偽ものを探そう (前田さん) |
(1) 4枚の金色のシートがあります。 本物の金はどれでしょう、という問いです。 薄い真ちゅうの板。 サバイバルシート。 折り紙です。 金箔 各1枚です。 色合いも若干違いますが、すかしてみるとすぐわかります。金箔だけ透けて見えます。 |
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(2) ここに金の卵があります。偽者か本物かを判定する方法を考えよう。 アルキメデスの逸話の教材化ですね。 重さは台ばかりではかれます。体積はどう測ればいいでしょうか。 容器に水を満たし、卵を入れて、あふれる水の体積を測ればいいのです。体積と重さから、この卵の密度が計算でき、金と比べることで本物かどうか判断できます。 体積を求めるには、浮力の大きさを測ることでも値を得られます。 そこで、浮力について生徒に質問したところ、誤解している生徒がたくさんいることがわかりました。 |
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同じ大きさの銅とアルミを見せて、受ける浮力はどちらの方が大きいかをたずねると、銅と答える生徒が多いそうです。重いものほど大きな浮力を受ける!、という感じを持っているのです。 浮力の仕組みが理解できていれば出てこない考えですが、理論だけで学んでいると、体にしみこんだ知識にならないのでしょう。 浮力についての正しい理解のために、補充実験を開発しました。 |
右の写真の秤は、左側が最小測定量0.1g、右側が0.01g。いずれも、物を載せたときの中央の板のひずみを、ひずみセンサーで測定して重量を出す構造になっています。 この板にフックを取り付け(改造)、錘をぶら下げることでも重さを測れます。 |
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同じ大きさでも重さの違う銅とアルミ。 密度の意味を再確認します。 |
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吊り下げた錘を水に入れたとき、上の秤の値の減少分が浮力の大きさであり、銅でもアルミでも同じであることを確認します。 あわせて、減少分が下の秤の増加分になっていることを確認します。 1度でも確認しておくと、理論がよりよく理解できます。 秤が小型なので、人数分あると、各自が確認できていいですね。 (この秤は1台2千円台だそうです。インターネット通販で購入。) |
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浮力の話の最後は、卵を水中で浮かすにはどうすればいいか、という問いです。 塩を溶かしていって、液の密度を上げることで、浮力を大きくできることに気づいてくれれば成功です。 このときの塩の濃度はどう求めたらいいでしょうか。いいかえると、卵が浮いたときまでに入れた塩の量をどう測ったらいいでしょうか。考えてみてください。 |
ニセ硬貨の判別 (前田さん) |
2008年2月18日の朝日新聞の夕刊におもしろい記事が載っていました。自販機などのニセ硬貨判別に音を利用するというものです。 硬貨を坂道で滑らせて、真ちゅうのブロックに衝突させ、そのときの音でコインを識別するというものです。 早速試してみました。 耳で聞いてわかるほどの違いがあるとは思えなかったのですが、やってみると、コインの種類で音がかなり違います。 外国の硬貨を持っている方(!)がいたので、それで試してみると、ほぼ同じ大きさ、重さでも、衝突の際の音は違います。硬貨の成分の違いでしょうか。 より正確に判定するためには、記事のように、音を録音してスペクトル分解をするのがよいようです。 これは効果的な方法であると理解できました。 |