例会速報 2021/02/14 Zoomによるオンラインミーティング


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授業研究:剛体の授業 北岡さんの発表
 北岡さんは高知県からの参加である。高校2年生を対象に行った「剛体」の授業について報告した。これまでいろいろな人から教わった実験等を参考にしたという。つりあいの実験、かまぼこ板の実験、大根切りの実験など、生徒に考えさせる演示実験・生徒実験をうまく組み合わせている。例会参加者からのコメントも活発だった。
 

 以下は、北岡さん本人から寄せられたコメント。北岡さんの教材プリントはこちら(PDF436KB)こちら(PDF360KB)

 今回の例会で、「なぜその実験を行うのか?」といったことを聞かれたが、上手く答えられないところも多々あり、自分自身の教材に対する理解がまだまだ浅いことを痛感した。生徒を斜めに立たせてみる、など他の先生方の実践も聞くことができ、とても参考になった。また力のモーメントや作用線の定義など、十分に教えられていない部分については深く反省した。大根を切る実験についても、予想以上にいろいろな意見が出て、改めて実験のねらいを持つことの重要性を痛感した。みなさまからの質疑応答を通して、授業改善のアイデアをいただけたし、自分自身の剛体に関する理解が深まったように思う。今回いただいた意見を参考にさせていただいて、授業を改善していきたいと思う。
 Zoomだからこそ、遠く離れた高知から授業報告をさせていただくことができた。他の方の報告も聞くことができて、大変ありがたい。機会があればまた勉強させていただきたい。
 

コイル巻き 竹部さんの発表
 ミシンのボビンをダイソーの2液混合エポキシ系樹脂で、適当な容器のフタに接着したもの、約1500巻きが(だいたい)5分ほどでできた。エナメル線を適度な張力を保ちながら持つのがコツ。野呂さんのyoutubeにある実験器を作りたかったが、コイル巻きの時間が無く授業では断念した。どうにか短時間で巻けないかと考え、このような形になったという。

 量産されたコイルから竹部さんの情熱がうかがえる。
 現状、何回巻いたのかが分からないのが難点だが、百均の万歩計や数取り器で巻き数カウンターが作れないだろうか。

プランク定数 竹部さんの発表
 竹部さんは、コロナ禍で1人1台測定ができるようにプランク定数測定器を作った。スライダックスが足りないため、ボリューム抵抗を使用した。鈴木さんの2018年3月の例会発表を参考にしたという。今年は時間が足りず実験の時間が取れなかったので、生徒実験で測定値がどの程度バラつくか未確認。

エアコーク 竹部さんの発表
 名古屋の日用品演奏ユニットkajiiの創さんが公開している楽器。コーラのペットボトルに自転車のバルブを付けたもの。竹部さんが紹介したところ、生徒の評判が良かった。
 左の画像は創さんのYouTube動画「【夏休みの自由研究】家で簡単に作れる楽器5選」から。
kajiiのブログはこちら→ http://kajiijapan.blog.jp/archives/5500416.html
kajiiの楽器図鑑#39エアコークの演奏はこちら→https://kajii.me/instruments/eako-ku-2/

音楽教材の中の「運動」&「運動」のイラスト 今井さんの発表
 子ども向けの音楽教材の中で、車の発車・停車のイラストとrit.やフェルマータなどの記号を対応させる問題があった。 今井さんは、加速しているバスが前のめりになっているその図に違和感があったので、加速している様子を描くイラストを他にも探してみた。
 加速感を表現する描画技法としては、加速している方向に線を引く、残像を残すなどがある。 小学生の娘さんにイラストを描いてもらったところ、停車や減速は信号で表現し、等速は線、加速は残像と線で表現を使い分けていた。 表現の適不適という議論ではなく、子どもや物理教育を受けていない人の、運動の認知のしかた、という観点で見ると興味深い。授業で生徒にイメージを絵に描かせてみるのも面白いかもしれない。
 このようなアウトリーチ活動を通じて、他教科やエンタメ分野にも発信していくと興味をもってもらえるのではないかと今井さんは考えている。

クント管の製作 森谷さんの発表
 見えない音を「見る」実験に「クント管」がある。従来の方法より安価で組み立てが容易な方法がThe Physics Teachers誌に掲載され、森谷さんはこれに倣って製作・実験をした。管は、蛍光灯のポリカーボネート製の保護チューブ(内径43.1mm、長さ1m)でアクリル管やガラス管に比較して安価であり衝撃、摩耗や溶剤に対する耐性がある。この管にぴったりサイズが合うホーンスピーカー(Pyle PDS341)は指向性が強く外部に漏れる音が比較的小さい長所がある。スタイロフォーム微粒子(平均径3mm)とコルク微粉末について実験を実施した。
 左と下の図はスタイロフォーム微粒子2.2gを使用し1000Hzの音を送った時の写真とイラストで、山と谷がきれいに並び、山はおよそ1.5cm間隔を開けて粒子が立ち上がる微細構造を示している。山と山の間隔は約17cmで、音速を340m/sとした時の波長λの1/2に等しい。

 

 下は、コルク微粉末を3.0g使用し1000Hzの音を送った時の写真で、やはり微粉末が立ち上がる微細構造を示す。スタイロフォームと違って、コルク微粉末では微細構造の他に砂丘のような盛り上がりが周期的に生じる。また、音を停止しても微細構造が崩れずに保持される。 この微細構造についてはまだ明確な説明はなされていないようだ。

 管内の物質をいろいろ変えたときのふるまいについては以下の論文がある。
伊藤義人・音の定常波による物質のふるまい・新潟県立教育センター研究報告第157号(1994)
 YPCでも、かつてエクスプロラトリアム展に刺激された鈴木健夫さんが1989/10/18の例会で「音のしぶき」と題して液体バージョンを紹介している。喜多さん、大西さんが科学の祭典で実演したこともあった。資料(PDFファイル2.2MB)はここ

電気工作ビンゴ 山本の発表
 藤沢市科学少年団では、市内の小4から中3の団員100名が、毎月自然観察などを楽しんでいる。例年は2月の活動では、はんだごてを使う電気工作にチャレンジするのが恒例だったが、今年はコロナ禍で100人が集まれる屋内会場が確保できず、はんだ工作は残念ながら見送らざるを得なかった。緊急事態宣言下でも電気工作を楽しめる方法はと、知恵を絞った結果、ミニブレッドボードを使って各家庭で電気工作の学習をしてもらうことになった。
 以前YPCでも好評だった「ネオピア電子ブロック」は今は入手できないようなので、これをモデルに秋月の「ミニブレッドボード」(写真左)を活用しようと考えた。ブレッドボードとパーツや電池をセットにして、日本郵便のスマートレター(180円)につめて各家庭に送る。同封のテキストを見ながら各自で取り組んでもらい、後日Zoomでオンライン成果報告会を開催して、質問に答えたりした。
 

 回路はLEDをつけるだけの易しいものから、CdSやトランジスタ、メロディICを組み合わせた中学生でも骨の折れるものまで9種類。子どもたちの根気を損なわないために、ビンゴ仕立てにして、いくつできるかチャレンジしてもらった。
 下の図はテキストに掲載した回路図と実体配線図、および実際に組み上げた回路の写真である。易しい回路から順に組み立てていくことで、抵抗・可変抵抗やスイッチのはたらき、CdSの光センサとしての機能、トランジスタの動作などが自然に理解できる構成になっている。
 報告を聞くと、多くの団員がパーフェクトビンゴに達して、大いに達成感を味わったようだった。団員用テキスト(PDFファイル918KB)はここ
 

Zoomの使用方法についての資料 門倉さんの発表
 小・中・高等学校では、既に対面授業に戻ってきているが、大学は依然として リモートによる授業が行われている。そこで門倉さんは、以前にもまとめた、 日々進化しているWeb会議システムZoomについての資料をアップデートした。できるだけ、画面と対比しながら設定や操作ができるように作成したという。門倉さんのオリジナルで、各学校でご活用いただいてよいとのこと。以下の、3ファイルからなる。各タイトル文字をクリックするとPDFファイルが開く。

Zoomミーティングの初期設定(PDFファイル:264KB)
 Zoomミーティングでは、様々な設定が可能となってきている。機能が増えるごとに設定が難しくなってきているので、設定画面を順に確認しながら必要な設定ができるように作成した。特に必ず設定しておきたいものは、背景を変えて示した。
Zoomのスケジュールと開始方法(PDFファイル:281KB)
 Zoomのスケジュール画面で、スケジュールを設定する方法を紹介した。スケジュールをするときに、設定しておかないと使用ができない機能など、簡単にできるだけわかり易く解説した。
Zoom開始後設定、共有、ブレイクアウト(PDFファイル:298KB)
 Zoom会議開始後に行うことができる機能やその操作の説明、特に頻繁に使う共有設定、ブレイクアウトについて解説している。  

動画問題の新機軸? 市原さんの発表
 市原さんは、こちらの動画のような問題を作ってみた。コンセプトは、動画でしかできない・動画であることに意味があることと、生徒が個人デバイスでコントロールできることを強みとして活かす、ようにしたいという動機だった。ただ、学校での対面授業が可能なら、実際に実験させればいい話ではあるが、将来的なオンラインコンテンツとして価値を見いだせると思う。市原さんは、「もう少し種類があると利用価値が上がるかもしれないので、動画を活用する問題のアイディアや、感想などがあれば教えて欲しい」と述べている。
 

NHKスペシャル「2030未来への分岐点」 越さんの番組紹介
 地球温暖化の危機を訴えるNHK番組の紹介。
第1回「暴走する温暖化 “脱炭素”への挑戦
 気候変動の影響が顕著になり、パリ協定の2100年までに平均気温+1.5°未満という目標達成のためには、2030年までに二酸化炭素排出-50%、2050年排出実質ゼロを目指さなければならない。 (そのためには社会の大変革が必要で、今話題の『人(ひと)新世の「資本論」』斉藤幸平著 がそのヒントを与えてくれる。) 番組では最新の「Hot house earth 理論」が紹介された。それによると、ティッピングポイント(臨界点)の+1.5℃を超えると、北極海、グリーンランドの氷、山岳氷河の融解、シベリアの永久凍土融解によるメタンガス(温室効果ガス)の噴出、海流大循環の変化、更には南極大陸の氷の崩壊まで連鎖的に進み、温暖化に歯止めが利かなくなるという。それを阻止するためにはこの4年間で削減目標達成のための態勢を整えなければならない。出演 森七菜。3回シリーズで、第3回は2/28(日)午後9時から(再放送3/3(水)午前0時から)放送。
第2回「飽食の悪夢〜水・食料クライシス〜」、第3回「プラスチック汚染の脅威

二次会Zoomによるオンライン二次会
 例会本体には27名、20時からの二次会にも10名が参加した。コロナ禍での各校の情報交換から、年齢相応の内視鏡検査の話まで様々の話題が飛び出す。自由なトークの時間だが、その中でもサイエンスを楽しんでいるのがYPCらしさだ。特に、阿部さんのTDLを舞台にした授業ネタ(下図はその一例)はみんなの関心を引いていた。
 


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