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「ここからは、多少かたい話をしたいと思います。
  まず、今日のテーマ、『楽しい授業と教材』ですが、私が先ほどからご紹介している教材を使いはじめた、教材開発したりするようになったのは、科学館勤務を経験してからでした。
  それまでは、部活中心の生活でした。立場が変わり、こういうものを集めだしたら、すごい奥が深くて、自分でもびっくりしました。それから、自分が変わっていきました。その変化が、生徒に対して良い影響を与えはじめたのです。
  生徒の生活をよく考えると、学校にいる時間が大体8時半から4時くらいまで、約7時間半。授業の時数が今1コマ50分の計算で約6時間。その間、生徒はイスに座ったまま授業を聞き、実験をすることになります。ですから、「授業がつまらない=学校生活が楽しくない」ということになります。各教科で担当しているのは、週に、理科なら3時間とか、そういう時間ですけども、やはり学校生活の主なことは授業なのかな、と改めて思っています。
  また、楽しい授業を成立させるには、教材と授業のルールを提示しておくこと。これがポイントだと思います。」



「教材、どんなものがあるか。(一番のポイントなのです。)
  魅力的な教材の見つけ方見つける目っていうのが大事なんです。学校内にそんなに良い教材が、あるかというと、あまりありません。今までの歴史的な産物等が、理科の準備室に置いてあって、それを使う。または、教科書の内容を忠実に授業することになってしまうことが多いのです。
  また、教材を見つける目というものがあります。参加されている方々の中で化石を掘りに行ったことのある人いませんか?そのとき、見つかりました?」
  受講者「小さい貝の化石が」
「小さいやつが。私も行きました。ちょっと慣れた人と同行しました。そうしたら、慣れた人はその場に行った瞬間に『あ、ここにある、ここにある』といわれるのです。私は、いわれないと分かんないのです。だんだん目が慣れていくと、1個見つかる。すると、他のものが見つかりだします。ここにもあった、あそこにもあったとなるわけです。
  教材も同様です。慣れもありますが、見つける目、教材を探そうとか、これは何に使えるかとか、いつも考えながら生活することが大事なのではと思います。
  例えば、100円ショップに行くと、嫁さんと私の品物を見る目が違うわけです。当然、買うものが全然違うのです。友人と行ってもそうです。教材を見つけようという視点で、そういう目で、いろいろなところを見ていただくこと、それが、目を養っていくことにつながると思います。」



「また、どこにあるかという点もポイントです。校内には無いです。
  ほとんどの場合、校外で、土日、放課後、勤務時間外の時間を使って探します。気がつくと閉店の時間ということもよくあります。どんなところで、場所で見つけるかということにもなりますが、・・・。
  まずは、情報をつかむっていうことが重要です。校内の理科教師に聞いてみるとか、あとは今お渡ししたような教育関係の雑誌。その中から、使えるものをピックアップする。取捨選択は各自でしてもらう。あとは研修会理科サークル。お勧めのサークルがあります。「サイエンスEネット」というう、川村先生がやっていられるものです。各地で理科関係のサークルが色々あると思います。神奈川でいうと、YPC(横浜物理サークル)。東京では、ガリレオ工房が有名です。色々あります。そういう会に出席していただくと、いろいろな方の情報が集まります。そのようなところを情報源とされるとよいかもしれません。
  また、この大学の近く(高田馬場)に仮説社という仮説実験授業を提唱している出版社もあります。ですから、是非、いろいろなところに顔を出していただくと、様々な情報が得られると思います。」



「その次の段階で、試作してみることも大事です。情報を元に、学校の教材で使いたいと思い作ると上手くいかないのです。
  実際に私も科学の祭典のガイドブックにしたがって実験するのですが、失敗する。工作ができない・・このようなことが起こります。なぜかというと、言葉では言い表せないようなポイントがあるわけです。コツや勘みたいなものです。
  例えば、この実験(グラスに水を入れて逆さにする実験)、私は、最初上手くいきませんでした。なぜか?と思って、よく見たら、縁がガタガタなのです。グラスの縁は(ガラスは)、みんな、平らだと思いこんでいます。実は、微妙にゆがんでいます。かたかたしています。では、このグラスはどうやって探してきたかというと、売場のグラスを全部調べてベストなものを、2個だけ買ってきました。大胆な方法としては、縁にやすりがけをしてしまう方法もあります。工業製品だからといって、きっちりできているわけではないようです。」



「今日、材料として使ったクリップには、秘密があります。13番というサイズです。一般的に使われているものより一つ小さめです。通常の事務等で使っているクリップだと、下に落ちて飛ばないのです。工作材料には、適した大きさがあります。
  このシールもメーカーによって重さが違います。Aというメーカーじゃないと工作に使えない等あるのです。ですから、是非、試作をして、いろいろなメーカーの材料で試していただくと成功すると思います。
  一番良いのは、科学の祭典等で、指導している人がいたら、一緒に見て、どこのメーカーのものが適している等を教えていただくことです。『同じ材料』っていうのはそういう意味なのです。
  それから、『完成品の10倍試作品がある』のです。試作を何回かやってもだめで、改良してきた結果、やっとできあがった、というものがたくさんあります。一発で作ろうっていうのは難しいかもしれない。いろいろ研究してらいたいと思います。」



「授業のルールですが、まず前を向かせることです。前を向かせることはすごく大事です。私の場合は、『私の顔を見てごらん、チャームポイントのほくろは、どこにあるか分かりますか?』って言いながら、前を向かせます。授業中は、どうするかというと、授業ですから、座ったら前を向きなさい。
  しかし、理科室の机は、このような向きではありません。大体、黒板があったら、横長の机があり、黒板に対して横向きに座ることになります。そこで、前を向いてというと、顔だけ向けるようになります。それはやめてください。体を向けてといいます。だから、椅子に背もたれがついてないんだ等、教室の仕様に関しても、ふれます。こちらをしっかり向かせてから話し出すっていうのがポイントです。
  これは、スムーズに授業を行うことや社会のマナーとしても、顔を見て話をするということ・・・大事です。
  また、進行上のポイントは、「一つだけ指示を出しておく」ことです。『これやって、あれやって、これやりなさい』と複数だと混乱します。「指示は一つだけ」です。



「いろいろな生徒に対応するために、難易度の高い課題等を、配らずに、用いておくことです。
  ある子に言われたのですが。『先生、授業つまらないよ』『なんで』と質問しました。『だってすぐできちゃうもん』と言われました。『ああ、そうか、この子は能力が高いので配布した問題が物足りないんだな』と思いました。その子の学力に合わせた課題を与えればしっかりとこなすのです。多分、今まで、みんなのペースに合わせて待っていてと言われて育った子だと思います。ですから、「そのまま待っているだけではつまらない」と言いたかったのでしょう。
  それ以来プリントもみんなに配る分、できちゃった子に配る分。それも、終わってしまうと困ので、ちょっとひねって難しくて考えてしまう問題。その三段構えで用意しています。
  授業中、コミュニケーションをとり、できる子にはできる子なりの問題を与えて、その子も伸ばさなきゃいけないと思うのです。平均的に全体を伸ばすことも大事です。いろんな子がいるので、その子に合わせたものを準備します。このことには、5年前くらいに気づいたのです。採用から10年間気づきませんでした。」


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