「教材のデパート」

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「皆さんこんにちは。
  中学の先生やっています。
  色んな会合にちょこちょこ顔を出して、川村先生とはサイエンスレンジャー絡みでお知り合いになりました。今度こんなの作ってみたよ、と言って色んなところに色んな開発したやつを持って行って、『どうだ、面白いじゃろう』と一人悦にいってたわけです。そういうのが結構たまりました。
  今度授業の達人やりたいよ、と立候補したときに、『じゃあ今までのたくさん色んな面白い実験や教材とかを紹介してください』というふうに言われましたので、じゃあ、舞の海にあやかって『教材のデパート』というような感じでやりましょうか、って言ってましたら、それがいつの間にかタイトルになっておりました。われながら変なタイトルですね。倒産寸前のデパートですが、在庫一斉処分というような形で今日は色々持ってきました。」



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「色々持ってきていますが、時間が非常に少ないです。だからぽんぽんとやりますので、興味がある、という人はですね、後で私に個人的に来てもらえればと思います。熱心な参加を期待します。
  例えばですね、こういうようなものをもって地域の幼稚園とかに科学ボランティアで行ったりします。『ぼく、疲れてる?』『ご飯食べてきた?』『気合入ってる?』と聞いて、気合チェッカー(筒を取り出す)っていう風にもっていくんですね。」
(受講生に近寄る)
「だいぶお疲れのようですが、大丈夫でしょうか?気合を入れるとですね、これ、気合のバロメータで、気合を入れるとですね、こんな風に模様が変わります。
  ちょっと元気がないですね、動くかな?どうぞ、気を、念じて。」
(受講生に念じさせる)
「まだまだ。」
(模様が変わる)
「っていうことで。拍手。」



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「これはモアレという現象を使っています。ワープロで作ったんです。普通のワープロでパターン印刷したのと透明なOHPに印刷したのとを重ねて、ちょっとずらすと模様が生まれます。
  数学では等差数列だの何だのと説明されてるそうですけど、そんなことよりも、『おもろいやないか』とそういう発想でいってます。
  ただ、こう回すと、どう流れてますかね。」
(中の筒を回す)
「反対に回すと?」
(逆向きに回す)
「どうずらすと、どうなるか?それなりに規則性がありますので、これは選択理科ですかね。選択理科とか選択数学で規則性を探る、というのにちょっと使ってみたんです。けどまあ、今は宴会ネタですね。」



「で、宴会ネタばっかり授業でやってもしょうがないわけですから、今日はどちらかというと授業に使える、あるいは私が授業に使ってそれなりに効果があったと思われるようなものを色々と紹介していきたいと思います。
  例えばですね、こんなものがありますね。ネックレスです。なかなか学校の先生っていうのは生徒がアクセサリー類持ってたら、『お前何しよるんか』って取り上げる方なんですけども、先生がネックレスをしていたら『なんじゃろか』って普通そう思われますね。そこから授業のスタートです。
  例えばこれは1個8mmの青いビーズなんですけども、109つあります。108つですとこれは煩悩の世界ですね、道徳の話になります。さて、地球が109つ分。これでピンときたらなかなかすごい、という感じですが、何かお気づきありませんか。」



(赤い丸い紙を広げる)
「本当は三浦折りしてたんですけど、ちょっと開きが悪いようで。
  太陽です。太陽の大きさ、直径は地球の109倍、ということで『こんなに違いがあるんだよ』っていうようなのを授業の最初にもってきます。『先生がなんでネックレス持っとんじゃ』というところでちょっと気を引いて、授業の中に入っていこうかなっていう。しめて315円の教材です。」



「それではですね、皆さんは一応将来は理科の先生になる、というようなことで、先生の卵ですね。
  大学の授業っていうのは、人知れずやってきて、人知れず座って、人知れず先生がやってきて、いつの間にか始まって、目が覚めたら終わってた、とかそういう世界かもしれませんが、中学校はですね、挨拶から始まるんですよ。ここ数年やってないんじゃないですか?
  そのたった一つの知識を得るまでに、場合によったら何人かが死んだ、あるいは殺された、そういう歴史もあるようなのですね。進化論にしても。
  そういう、人類が何百年、何千年、長い間かけてきた英知をわずか数秒で教えてもらってるんです。数百年の知識を数分間で習うんです。普通なら気がつかない知識をもらうわけですから、そこにはやっぱりそれを見つけるまでに努力してきた先人の人たちの思いとか、そういうようなものに敬意を表して、『これから授業をするんだ、習うんだ』っていうような心構えが必要だ、と思うんです。
  ということで他の県はよく知りませんが、山口県では、『起立、気をつけ、礼、お願いします』こういうような形で始めます。
  ということで、あなた方も数年したら実際に現場に立って、礼の指導から入るかもしれませんので、ちょっと懐かしいということも含めまして、じゃあ、ちょっと、起立。気をつけ。礼。お願いします。」
  受講生「お願いします」
「ありがとうございました。私の趣味を押し付けたようですみません。」



「それではですね、今日は1年生。ちょっと時期が悪いんですけども、春は植物から入ります。
  小学校の頃のテスト、覚えてます?花のつくりは中心から、めしべ、おしべ、花びら、がく。こういう形ですね。テストしても100点取らせることができます。
  これはさっき『できるかな』とか言いながら5分で作ったんですけど、チューリップです。チューリップの花びらって何枚あるんですかね?
  一応数を合わせて作ってます。見えますか?1,2,3,4,5,6。6枚。いいですかね。
  子どもらと数えるとですね、はい、英語で言ってみよう。
  ワン、ツー、スリーとかですね、イー、アル、スーとかやるんですけど、本当にこれ6枚でしたっけ?どう数えても6枚なんですよね。」



「そこで、さっき花の構造やりましたよね。一番外側ってがくなんですよ。
  そうするとこれ、チューリップっていうのは内側3枚が120°でできていて、その外側をカバーする形で生えている外側の3枚は、花びらのように見えるけど、がくなんですよね。
  考えてみるとチューリップ、つぼみのときは、がくで緑色してますよね。それがだんだん色づき、開いていって、というような形で花びらみたいになってくるわけですね。
  頭の中で花の構造が分かっていても、実際のものを見たときにそれが繋がらないということもよくあることなんです。」



「じゃあもう一つ質問を出したいと思います。このチューリップネタ。
  中学校の教科書ではですね、花が咲く植物を種子植物という、なんていうような一文が書いてあります。アンダーライン引かせて、小テストして、皆100点。そういう生徒たちに、『チューリップって種子ありましたっけ?』と聞く。
  種、あります?どうでしょうか。花が咲くと種子ができる。それを種子植物と呼ぶ。だからチューリップの花ですから、種子植物なんですね。種はあります。種子があります。
  ただ子どもらは『えー、うそー。球根で増えるんで、種子じゃ増えんよ。そもそも種子ってどこにあるの』って。『おいおいおい、テストでやったじゃない。めしべの根元を切ったら胚珠があるってみんな丸だったじゃないか。』『あ、そうだった』
  ということで、今から言いたいことは何かと言うと、テストで花の構造、花のつくり、種子、胚珠、胚珠が種子になるなど、みんな丸になっているような子でも、『チューリップに種ある?』って言われたら『ない』と言って平気なんですね。『もうちょっとよく考えよう。チューリップの花やで』と言うと、ちょっと賢い子が『あっ』という感じで気が付きます。」



「チューリップの子房を実際にカットしてみて、胚珠があるじゃないか、というようなことでも、子どもらにとっては発見かもしれないですね。
  『じゃあなんでチューリップは種で増えないの?』っていう子がいる。『種で増えても良いんだけど、今君らがチューリップの種植えると、小さい花がぽっと咲くのが、君らが高校を卒業したころだよ。6年くらいかかって小さい花を咲かせるんで、これじゃ商売にならんだろう』というような話で入っていきます。
  ということで、ここまでの話をまとめると、学校で習った知識と自分たちが普段使ってる知識はずれている、ということなんですね。チューリップは球根で増えるんだということを経験から知識として持っている。学校で種子植物は種子で増えるよ、と習う。これが必ずしも一致しない。」


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